電気の流れやすさを数値で表す「電気伝導率」は、材料科学・化学・電気工学など幅広い分野で欠かせない指標です。
しかし、その単位はS/m(ジーメンス毎メートル)をはじめ、mS/cm(ミリジーメンス毎センチメートル)、Ω⁻¹・m⁻¹(オーム逆数毎メートル)など複数の表記が存在し、「どれを使えばいいのか」「換算はどうするのか」と戸惑う方も多いでしょう。
本記事では、電気伝導率の単位の読み方・意味・一覧から換算・変換の方法まで、わかりやすく丁寧に解説していきます。
導電率や比電導度など関連する用語も合わせて整理しているので、ぜひ最後までお読みください。
電気伝導率の単位はS/m(ジーメンス毎メートル)が基本
それではまず、電気伝導率の単位について結論からお伝えしていきます。
電気伝導率(導電率)のSI単位はS/m(ジーメンス毎メートル)です。
「S」はジーメンス(Siemens)の略号で、電気抵抗の単位Ω(オーム)の逆数に相当します。
つまり、1 S/m は 1 Ω⁻¹・m⁻¹(オームのマイナス1乗・メートルのマイナス1乗)とまったく同じ意味を持つ単位です。
電気伝導率の基本単位まとめ
S/m = ジーメンス毎メートル(SI単位・最もよく使われる)
Ω⁻¹・m⁻¹ = オーム逆数毎メートル(S/mと同一の量)
この2つは表記が異なるだけで、数値的にまったく同じ値を示します。
電気伝導率は、物質がどれだけ電気を通しやすいかを示す物性値です。
値が大きいほど電気を流しやすく、値が小さいほど電気抵抗が大きい(電気を通しにくい)ことを意味します。
金属のような良導体では非常に大きな値を示し、ガラスやセラミックスのような絶縁体では極めて小さな値になるでしょう。
また、溶液の導電性を測定する場面では、mS/cm(ミリジーメンス毎センチメートル)や μS/cm(マイクロジーメンス毎センチメートル)といった単位も頻繁に登場します。
実用的な計測器や水質管理の現場では、mS/cm や μS/cm がむしろ標準的に用いられていることも覚えておくとよいでしょう。
電気伝導率の単位の読み方と記号の意味
続いては、電気伝導率にまつわる単位の読み方と記号の意味を確認していきます。
正しく読めないと文献や資料を読む際に混乱しやすいため、ここでしっかり整理しておきましょう。
S/m(ジーメンス毎メートル)の読み方
「S/m」は「ジーメンス毎メートル」と読みます。
「S」はドイツの発明家エルンスト・ヴェルナー・フォン・ジーメンス(Ernst Werner von Siemens)に由来する単位記号です。
「毎メートル」はその値が「1メートルあたり」であることを示しており、物質の断面積や長さによらない固有の物性値として電気伝導率を表せます。
なお、かつては「モー(mho)」という単位も使われており、Ω(オーム)を逆さに書いた「℧」という記号が当てられていましたが、現在では廃止されS/mに統一されています。
Ω⁻¹・m⁻¹(オーム逆数毎メートル)の読み方
「Ω⁻¹・m⁻¹」は「オームのマイナス1乗・メートルのマイナス1乗」または「オーム逆数毎メートル」と読みます。
Ω⁻¹はオームの逆数、つまりジーメンス(S)そのものです。
そのため「Ω⁻¹・m⁻¹ = S/m」という等式が成立します。
古い教科書や文献ではΩ⁻¹・m⁻¹の表記を見かけることがあるので、S/mと同じ意味だと知っておくと安心です。
mS/cm・μS/cmの読み方と使われる場面
「mS/cm」は「ミリジーメンス毎センチメートル」、「μS/cm」は「マイクロジーメンス毎センチメートル」と読みます。
これらは主に水溶液・飲料水・海水・排水などの導電性を測定する際に広く使われる単位です。
水質計測器や導電率計(コンダクティビティメーター)の表示もmS/cmやμS/cmで示されることがほとんどでしょう。
純水の電気伝導率は約0.055 μS/cm、海水では約50,000 μS/cm(50 mS/cm)程度という値が目安です。
電気伝導率の単位一覧と換算・変換の方法
続いては、電気伝導率の単位一覧と換算・変換の方法を詳しく確認していきます。
複数の単位が登場する場面でも、換算の仕組みを理解していれば迷わずに対応できます。
単位一覧表
以下の表に、電気伝導率(導電率)でよく使われる単位をまとめました。
| 単位記号 | 読み方 | SI単位(S/m)との関係 | 主な用途・場面 |
|---|---|---|---|
| S/m | ジーメンス毎メートル | 基準(×1) | SI基本単位、固体材料の物性評価 |
| mS/m | ミリジーメンス毎メートル | 1 S/m = 1000 mS/m | 土壌・地盤の電気伝導率測定 |
| S/cm | ジーメンス毎センチメートル | 1 S/cm = 100 S/m | 化学・電気化学分野 |
| mS/cm | ミリジーメンス毎センチメートル | 1 mS/cm = 0.1 S/m | 水溶液・水質管理・食品・農業 |
| μS/cm | マイクロジーメンス毎センチメートル | 1 μS/cm = 0.0001 S/m(10⁻⁴ S/m) | 純水・飲料水・超純水管理 |
| Ω⁻¹・m⁻¹ | オーム逆数毎メートル | 1 Ω⁻¹・m⁻¹ = 1 S/m | 旧表記、物理・工学の教科書 |
| Ω⁻¹・cm⁻¹ | オーム逆数毎センチメートル | 1 Ω⁻¹・cm⁻¹ = 100 S/m | 旧表記、化学・電気化学 |
換算・変換の具体的な計算方法
単位の換算は、接頭語(ミリ・マイクロなど)と長さの単位(m・cm)の2段階で考えるとスムーズです。
まず接頭語の部分を確認しましょう。
接頭語の換算比
ミリ(m)= 10⁻³(0.001)
マイクロ(μ)= 10⁻⁶(0.000001)
例)1 mS = 0.001 S / 1 μS = 0.000001 S
次に長さの単位(m と cm)の換算を加えます。
mS/cm → S/m への変換
1 mS/cm = 10⁻³ S / 10⁻² m = 10⁻³ ÷ 10⁻² S/m = 10⁻¹ S/m = 0.1 S/m
つまり、1 mS/cm = 0.1 S/m(S/mに換算するには10倍する)
μS/cm → S/m への変換
1 μS/cm = 10⁻⁶ S / 10⁻² m = 10⁻⁴ S/m = 0.0001 S/m
つまり、1 μS/cm = 0.0001 S/m(S/mに換算するには10,000で割る)
代表的な物質・溶液の電気伝導率の目安
実際の値のイメージをつかむために、代表的な物質・溶液の電気伝導率の目安をまとめておきましょう。
| 物質・溶液 | 電気伝導率の目安 |
|---|---|
| 銀(Ag) | 約6.3 × 10⁷ S/m |
| 銅(Cu) | 約5.9 × 10⁷ S/m |
| アルミニウム(Al) | 約3.7 × 10⁷ S/m |
| 海水 | 約4〜5 S/m(約50 mS/cm) |
| 水道水 | 約0.005〜0.05 S/m(5〜50 mS/m) |
| 純水(蒸留水) | 約5.5 × 10⁻⁶ S/m(約0.055 μS/cm) |
| ガラス | 約10⁻¹² S/m 以下 |
| シリコン(半導体) | 約10⁻³〜10³ S/m(条件による) |
金属と純水では電気伝導率に10兆倍以上の差があることがわかります。
このように電気伝導率は非常に広い範囲の値をとるため、適切な単位を選んで表記することが重要です。
電気伝導率と電気抵抗率(比抵抗)の関係
続いては、電気伝導率と密接に関わる「電気抵抗率(比抵抗)」との関係を確認していきます。
両者を混同しやすいので、しっかり区別しておきましょう。
電気抵抗率(ρ:ロー)とは
電気抵抗率(比抵抗)は、電気の流れにくさを示す物性値で、記号は「ρ(ロー)」、単位は「Ω・m(オーム・メートル)」です。
電気伝導率σ(シグマ)とは逆数の関係にあります。
電気伝導率 σ(S/m)と電気抵抗率 ρ(Ω・m)の関係
σ = 1 / ρ (伝導率は抵抗率の逆数)
ρ = 1 / σ (抵抗率は伝導率の逆数)
例)σ = 2 S/m のとき、ρ = 0.5 Ω・m
伝導率が高い材料は抵抗率が低く、伝導率が低い材料は抵抗率が高いという関係です。
金属はσが大きく(ρが小さく)、絶縁体はσが小さく(ρが大きく)なります。
導電率・比電導度・コンダクタンスとの違い
関連する用語として「導電率」「比電導度」「コンダクタンス」が挙げられますが、それぞれ意味や使われ方が少し異なります。
| 用語 | 記号 | 単位 | 説明 |
|---|---|---|---|
| 電気伝導率(導電率) | σ(シグマ) | S/m | 物質固有の電気の流れやすさ(物性値) |
| 比電導度 | κ(カッパ) | S/m または S/cm | 溶液の電気伝導率。σと同義で使われることが多い |
| コンダクタンス | G | S(ジーメンス) | 特定の物体・回路素子の電気の通しやすさ(物体依存) |
「導電率」は「電気伝導率」とほぼ同義で使われる言葉です。
「比電導度」は特に電解質溶液の分野で使われる呼び名で、やはり電気伝導率と同じ意味合いを持ちます。
一方「コンダクタンス(G)」は、特定の試料・回路素子に固有の値であり、形状(長さや断面積)に依存する点が「電気伝導率」とは異なります。
電気伝導率の計算式と求め方
電気伝導率は以下の関係式から求めることができます。
電気伝導率の計算式
σ = G × L / A
σ:電気伝導率(S/m)
G:コンダクタンス(S)
L:試料の長さ(m)
A:試料の断面積(m²)
例)G = 0.5 S、L = 0.02 m、A = 0.001 m² のとき
σ = 0.5 × 0.02 / 0.001 = 10 S/m
この式からもわかるように、電気伝導率は形状に依存しない物質固有の物性値です。
同じ材料であれば、試料の大きさや形が変わってもσの値は一定になります。
まとめ
本記事では、電気伝導率の単位・読み方・換算・変換・一覧について幅広く解説しました。
電気伝導率のSI単位はS/m(ジーメンス毎メートル)であり、Ω⁻¹・m⁻¹と同じ意味を持ちます。
溶液や水質管理の場面ではmS/cmやμS/cmが広く使われており、S/mとの換算も「接頭語」と「長さの単位」の2段階で整理するとスムーズです。
また、電気伝導率σと電気抵抗率ρは逆数の関係にあり、「導電率」「比電導度」は電気伝導率とほぼ同義の用語として扱われます。
コンダクタンスGは形状依存の量である点で電気伝導率とは区別されます。
単位や換算に迷ったときは、本記事の一覧表や変換式をぜひ参考にしてください。