化学物質の物性データを調べるとき、沸点や融点・密度・引火点などの基本情報は非常に重要です。
今回取り上げるのは、石油化学や燃料分野でもよく登場する炭化水素化合物「オクタン(Octane)」。
オクタンの沸点は?融点・密度・比重・分子量・引火点も解説【公的機関のリンク付き】というテーマで、化学的な基礎データを網羅的にまとめました。
ガソリンのオクタン価という言葉でも耳にする機会が多い物質ですが、その物性について詳しく把握している方は意外と少ないかもしれません。
本記事では、オクタンの沸点をはじめ、融点・密度・比重・分子量・引火点といった重要な物性値を、公的機関のデータも参照しながらわかりやすく解説していきます。
安全な取り扱いや実験・業務への応用にも役立つ内容ですので、ぜひ最後までご覧ください。
オクタンの沸点は約125.7℃|主要物性の結論まとめ
それではまず、オクタンの沸点および主要な物性データについて解説していきます。
オクタン(Octane)は、炭素数8の直鎖アルカン(飽和炭化水素)であり、化学式はC₈H₁₈で表されます。
石油留分の一成分として広く知られており、特にガソリンのオクタン価の基準物質(イソオクタン)の名前の由来にもなっています。
まず最も基本的な物性である沸点ですが、オクタンの沸点は約125.7℃(常圧・1atm条件下)とされています。
この値は、炭素数が増えるほど沸点が上昇するアルカン系化合物の規則性とも一致しており、ヘキサン(約69℃)やヘプタン(約98℃)よりも高い沸点を持つことがわかります。
オクタンの沸点は約125.7℃(常圧下)。炭素数8のアルカンとして、同族列の中でも比較的高い沸点を示す物質です。
以下に、オクタンの主要な物性値を一覧表にまとめました。
| 物性項目 | 値 |
|---|---|
| 化学式 | C₈H₁₈ |
| 分子量 | 114.23 g/mol |
| 沸点 | 約125.7℃(常圧) |
| 融点 | 約-56.8℃ |
| 密度 | 約0.703 g/cm³(20℃) |
| 比重(対水) | 約0.703(水=1) |
| 引火点 | 約13℃ |
| 外観 | 無色透明の液体 |
これらの値は、後述する各セクションでさらに詳しく解説していきます。
なお、物性データは測定条件や文献によって若干の差異が生じる場合があるため、公的機関のデータを参照することが重要です。
オクタンの融点・分子量・構造的特徴を理解する
続いては、オクタンの融点・分子量・構造的な特徴を確認していきます。
オクタンの融点
オクタンの融点は約-56.8℃とされています。
これは常温(約20℃)よりもはるかに低い温度であるため、通常の環境ではオクタンは液体として存在します。
融点が非常に低い理由は、オクタンが無極性の炭化水素であり、分子間力(ファンデルワールス力)が比較的弱いためです。
同じアルカン系化合物でも、炭素数が多くなるほど分子間力が増大し、融点・沸点ともに上昇する傾向があります。
アルカンの融点・沸点の傾向
炭素数が増加するにつれ、分子量が大きくなり、分子間に働くファンデルワールス力が強くなります。
その結果、融点・沸点が段階的に上昇します。
例)メタン(C₁)沸点:-161.5℃ → ヘキサン(C₆)沸点:約69℃ → オクタン(C₈)沸点:約125.7℃
オクタンの分子量
オクタンの分子量は114.23 g/molです。
化学式C₈H₁₈をもとに計算すると、炭素(C)の原子量が12.01、水素(H)の原子量が1.008であることから以下のように求められます。
分子量の計算式
C₈H₁₈の分子量 =(12.01 × 8)+(1.008 × 18)
= 96.08 + 18.144
= 114.22 g/mol(≒114.23 g/mol)
この分子量は、同族のヘプタン(100.20 g/mol)より約14大きく、炭素1つ分(CH₂基)の質量に相当します。
オクタンの構造的特徴
オクタンはn-オクタン(ノルマルオクタン)とも呼ばれ、炭素原子8個が直鎖状に連なった構造を持っています。
分岐のないシンプルな構造ゆえに、対称性が高く比較的安定した物質です。
一方、炭素骨格の分岐の仕方によってさまざまな異性体が存在し、最もよく知られているのが2,2,4-トリメチルペンタン(イソオクタン)です。
イソオクタンはガソリンのオクタン価の基準となる物質(オクタン価=100)として利用されており、n-オクタンとは物性が大きく異なります。
オクタンの密度・比重・引火点と安全性について
続いては、オクタンの密度・比重・引火点と安全性について確認していきます。
オクタンの密度と比重
オクタンの密度は約0.703 g/cm³(20℃条件下)とされています。
水の密度が1.000 g/cm³であることを基準とすると、オクタンの比重は約0.703(水=1)となり、水よりも軽い物質であることがわかります。
この性質から、オクタンを含む油分が水面に浮くという現象が起こります。
消防や環境対策の観点からも、水系環境へのオクタンの流出には十分な注意が必要です。
| アルカン化合物 | 密度(g/cm³、20℃) | 沸点(℃) |
|---|---|---|
| ヘキサン(C₆H₁₄) | 約0.659 | 約69℃ |
| ヘプタン(C₇H₁₆) | 約0.684 | 約98℃ |
| オクタン(C₈H₁₈) | 約0.703 | 約125.7℃ |
| ノナン(C₉H₂₀) | 約0.718 | 約150.8℃ |
表からもわかるように、炭素数が増えるにつれて密度も緩やかに上昇しており、アルカン系化合物としての規則性が見て取れます。
オクタンの引火点と危険性
オクタンの引火点は約13℃とされています。
引火点とは、可燃性液体の蒸気が空気と混合して引火するのに十分な濃度に達する最低温度のことです。
オクタンの引火点は13℃と、常温(20℃前後)に非常に近い値であるため、室温付近でも引火の危険性があることを意味しています。
引火点13℃という値は、日本の消防法において「第4類危険物・第1石油類(非水溶性)」に相当します。取り扱いには十分な換気と火気管理が必要です。
なお、消防法における第1石油類とは、引火点が21℃未満の非水溶性液体を指します。
オクタンはこの区分に該当するため、貯蔵・取り扱いには法令上の規制が適用されます。
オクタンの安全な取り扱いについて
オクタンを取り扱う際には、以下の点に注意することが求められます。
まず、十分な換気が確保された場所での作業が基本です。
オクタンは蒸気圧が比較的高く、常温でも蒸発しやすいため、密閉空間では可燃性蒸気が滞留しやすくなります。
また、静電気による着火リスクにも注意が必要であり、取り扱い設備のアース(接地)が推奨されます。
皮膚や眼への接触は刺激性があるため、保護具(手袋・保護眼鏡)の着用も重要です。
オクタンの用途と公的機関のデータ参照について
続いては、オクタンの主な用途と、信頼性の高いデータソースとなる公的機関の情報を確認していきます。
オクタンの主な用途
オクタンは主に以下のような分野で利用されています。
代表的な用途はガソリンの成分としての利用です。
石油の蒸留によって得られる直鎖アルカンの一種であり、ガソリン留分に含まれる主要炭化水素として知られています。
また、有機溶媒としての用途もあります。
無極性溶媒であるため、油脂・ゴム・樹脂などの溶解に利用されることがあります。
さらに、研究・分析用の標準物質や試薬としても使用されており、ガスクロマトグラフィー(GC)の保持時間の基準として参照されることもあります。
| 用途分野 | 具体的な利用例 |
|---|---|
| 燃料 | ガソリン成分、燃焼試験の標準物質 |
| 溶媒 | 油脂・ゴム・樹脂類の溶解 |
| 分析・研究 | GC分析の保持指標(リテンションインデックス) |
| 教育・試薬 | 化学実験用標準試薬 |
公的機関のデータベースを活用しよう
オクタンの物性データを調べる際は、信頼性の高い公的機関や学術データベースを活用することが重要です。
以下に代表的なデータソースをご紹介します。
まず、NIST(米国国立標準技術研究所)のWebBookは、物質の熱力学的データや物性値を無料で参照できる非常に信頼性の高いデータベースです。
オクタンのデータは以下のURLから確認できます。
NIST WebBook – n-Octane
URL:https://webbook.nist.gov/cgi/cbook.cgi?ID=C111659&Type=JANAFSTH&Table=on
(NISTの公式サイトにてオクタンの熱力学データ・物性値が確認できます)
次に、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)のJ-CHECK(化学物質評価研究機構)でも、化学物質の安全性情報や物性データが提供されています。
NITE 化学物質総合情報提供システム(CHRIP)
URL:https://www.nite.go.jp/chem/chrip/chrip_search/srhInput
(CAS番号「111-65-9」で検索するとオクタンの情報が確認できます)
また、国内では国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)や環境省の化学物質情報データベースも参考になります。
CAS番号と識別情報
化学物質を公的データベースで検索する際には、CAS登録番号(CAS番号)を使用すると確実です。
n-オクタンのCAS番号は111-65-9です。
この番号は国際的に統一された化学物質の識別コードであり、異なるデータベース間でも同一物質を正確に検索するために活用されています。
n-オクタンの基本識別情報
化学式:C₈H₁₈
CAS番号:111-65-9
IUPAC名:octane
別名:ノルマルオクタン、n-オクタン
まとめ
本記事では、オクタンの沸点は?融点・密度・比重・分子量・引火点も解説【公的機関のリンク付き】というテーマで、オクタンの基本的な物性データを網羅的に解説しました。
最後に、ポイントを整理しておきましょう。
オクタン(C₈H₁₈)は炭素数8の直鎖アルカンで、沸点は約125.7℃、融点は約-56.8℃です。
密度は約0.703 g/cm³(20℃)であり、水よりも軽い液体として知られています。
分子量は114.23 g/molで、炭素数8・水素数18の構成から計算で導くことが可能です。
また、引火点が約13℃と常温に近く、消防法上の第4類危険物・第1石油類(非水溶性)に該当することから、取り扱いには十分な注意が必要です。
物性データの確認には、NISTのWebBookやNITEのCHRIPといった信頼性の高い公的機関のデータベースを活用することをおすすめします。
オクタンの物性を正確に理解することは、安全管理・実験計画・工業利用のいずれにおいても欠かせない基礎知識となるでしょう。
本記事がオクタンの物性理解のお役に立てれば幸いです。