リスクアセスメントの重要性は理解していても、実際にどのように進めればよいか悩んでいる担当者の方も多いでしょう。
リスクアセスメントには定められた手順があり、使用する手法・評価基準・記録方法を適切に選ぶことで、効果的かつ効率的に実施できます。
本記事では、リスクアセスメントのやり方を具体的な手順・代表的な手法・評価基準・実施体制の整え方とともに詳しく解説していきます。
これからリスクアセスメントを始める方も、すでに実施しているが方法を見直したい方にも役立つ内容をお届けします。
リスクアセスメントの実施前に整えるべき準備
それではまず、リスクアセスメントを実施する前に整えるべき準備について解説していきます。
リスクアセスメントを効果的に進めるためには、事前の準備と体制整備が非常に重要です。
実施体制と担当者の選定
リスクアセスメントは特定の担当者一人が行うのではなく、現場の作業者・安全衛生担当者・管理職が連携して取り組むことが推奨されます。
現場を知っている作業者の参加はリスクの見落とし防止に大きく貢献し、管理職の参画はリスク低減措置の実施決定に向けた組織的なバックアップを可能にします。
安全衛生委員会や安全衛生推進者を中心に実施チームを組織し、役割分担を明確にしてから取り組みを始めることが大切です。
必要な情報・資料の収集
リスクアセスメントに先立ち、以下の情報・資料を収集しておくことが重要です。
・作業手順書・作業標準書
・使用機械・設備の取扱説明書・仕様書
・化学物質のSDS(安全データシート)
・過去の労働災害・事故・ヒヤリハットの記録
・作業環境測定結果
・行政通達・業界ガイドラインなどの関連資料
これらの情報を事前に整理しておくことで、リスクの特定漏れを防ぎ、評価の質を高めることができます。
対象作業・範囲の明確化
リスクアセスメントを実施する前に、対象とする作業・部署・設備の範囲を明確に定めておくことが大切です。
一度にすべての作業を対象にしようとすると負担が大きくなるため、リスクが高いと考えられる作業や、法令で対象となっている化学物質の取り扱い作業から優先的に着手することが現実的なアプローチといえます。
リスクアセスメントの代表的な手法一覧
続いては、リスクアセスメントに使われる代表的な手法を確認していきます。
リスクアセスメントの手法には様々な種類があり、業種・作業内容・目的に応じて適切な手法を選ぶことが重要です。
チェックリスト法
チェックリスト法は、あらかじめ危険源や問題点をリスト化したチェックリストを使って、職場の危険状態を確認していく手法です。
実施が簡単で担当者の経験に左右されにくいという利点がある一方、チェックリストに記載されていない未知のリスクを発見しにくいというデメリットもあります。
小規模事業場や初めてリスクアセスメントに取り組む企業にとって、最も取り組みやすい手法の一つでしょう。
マトリクス法(リスクマトリクス)
マトリクス法は、リスクの「発生可能性」と「被害の重大性」を縦軸・横軸に取ったマトリクス(表)を使ってリスクの大きさを視覚的に評価する手法です。
リスクレベルの例:
重大性(大)×発生可能性(高)→ リスクレベル4(最優先対策)
重大性(中)×発生可能性(中)→ リスクレベル2(中程度の対策)
重大性(小)×発生可能性(低)→ リスクレベル1(対策の優先度低)
マトリクス法は視覚的にリスクの優先度を整理できるため、対策の優先順位づけがしやすく多くの職場で採用されている実用的な手法です。
FMEA・FTA・HAZOPなどの高度な手法
製造業・化学プラント・航空・医療など高い安全性が求められる業種では、より高度なリスクアセスメント手法が使われます。
FMEA(故障モード影響解析)は製品や設備の各部品の故障モードとその影響を体系的に分析する手法、FTA(故障の木解析)は特定の事故・故障を頂上事象として原因を樹状に展開する手法、HAZOP(ハザード操作性解析)はプロセスプラントの設計や運転に関するリスクを系統的に評価する手法です。
リスクアセスメントの具体的な実施手順
続いては、リスクアセスメントの具体的な実施手順を確認していきます。
準備が整ったら、以下の手順に沿ってリスクアセスメントを進めていきましょう。
手順1:危険源の特定と洗い出し
まず作業を細かいステップに分解し、各ステップで生じうる危険源を網羅的に洗い出します。
現場観察・作業者へのヒアリング・過去の事故事例・SDS情報などを参考にしながら、「何が」「どのような状態で」「誰に対して」危険をもたらすのかを具体的に記述することが重要です。
手順2:リスクの見積もりと評価
特定した危険源ごとに、リスクマトリクスなどの手法を使ってリスクの大きさを評価します。
評価の際は「現在の対策を考慮した上でのリスク(残留リスク)」を評価することが重要であり、対策前の状態だけでなく既存の安全対策が機能した後のリスクを見積もることで、追加対策の必要性を判断できます。
手順3:リスク低減措置の立案と実施・記録
評価結果に基づいてリスク低減措置を決定し、担当者・期限・コストを明確にした上で実施計画を立てます。
実施後は効果を確認するためのフォローアップ評価を行い、リスクが十分に低減されたかどうかを検証することが必要です。
すべての評価内容・対策内容・実施結果を記録として残し、労働者に周知することで継続的な安全管理の基盤が整います。
リスクアセスメントは「一度やればよい」ものではありません。設備の変更・作業方法の変更・新しい物質の導入・事故の発生などをきっかけに定期的に見直し、継続的に改善するサイクルを回すことが法令上も求められており、安全文化の醸成につながります。
まとめ
本記事では、リスクアセスメントのやり方として準備・手法の選択・具体的な実施手順について解説してきました。
リスクアセスメントは危険源の特定→リスクの評価→低減措置の実施というサイクルを体系的に回すプロセスであり、チェックリスト法・マトリクス法など業種に応じた手法の選択が重要です。
現場作業者・安全衛生担当者・管理職が連携した実施体制を整え、定期的な見直しと記録の維持を続けることが、リスクアセスメントを機能させるための最大のポイントとなるでしょう。
まずは対象範囲を絞り、取り組みやすい手法から始めてみることをおすすめします。