数学の数列の単元において「等比数列」は等差数列と並んで最も基本的かつ重要な数列のひとつです。
銀行の複利計算・細菌の増殖・放射線の減衰など、等比数列は自然界や日常生活の様々な現象をモデル化するために活用されます。
本記事では、等比数列の定義と意味、一般項の公式、和の公式、漸化式、等差数列との違いについてまとめて解説していきます。
等比数列とは?結論として「各項が一定の比(公比)で変化する数列」
それではまず、等比数列とは何かについて、結論から解説していきます。
等比数列(Geometric Sequence)とは、隣り合う2つの項の比が常に一定の値(公比r)になる数列のことであり、前の項に公比rをかけることで次の項が求まる数列のことです。
数列{an}が等比数列であることは「an+1/an = r(一定)」という条件で定義されます。
等比数列の基本的な例を示します。
公比r=2の等比数列:1, 2, 4, 8, 16, 32, …(各項を2倍すると次の項になります)
公比r=1/2の等比数列:16, 8, 4, 2, 1, 1/2, …(各項を1/2倍すると次の項になります)
公比r=-1の等比数列:1, -1, 1, -1, 1, -1, …(符号が交互に変わります)
公比r=1の等比数列:3, 3, 3, 3, 3, …(すべての項が等しくなります)
等比数列のポイントは「どの隣り合う2項間でも比(後の項÷前の項)が一定」という点であり、この一定の比を「公比r(コウヒ)」と呼ぶでしょう。
公比rは0以外のどんな実数(または複素数)でも取り得ますが、高校数学ではr≠0の実数の範囲で扱うことが一般的です。
等差数列との違い
「等差数列」と「等比数列」は混同されやすいため、違いを明確にしましょう。
等差数列は「隣り合う2項の差が一定(公差d)」の数列であり、等比数列は「隣り合う2項の比が一定(公比r)」の数列という根本的な違いがあるでしょう。
等差数列:1, 3, 5, 7, 9, … (差が2で一定)、等比数列:1, 3, 9, 27, 81, … (比が3で一定)という対比で理解すると明確です。
等差数列は足し算(加法)で構成され、等比数列はかけ算(乗法)で構成されるという違いが本質的な差異といえます。
等比数列の一般項の公式
等比数列の第n項(一般項)は以下の公式で求められます。
等比数列の一般項の公式を示します。
an = a₁ × r^(n-1)
ここでa₁は初項(第1項)、rは公比、nは第n項を示します。
例:初項2、公比3の等比数列の第5項は a₅ = 2 × 3^(5-1) = 2 × 81 = 162です。
公式の導き方:a₂=a₁r, a₃=a₁r², …と続けると、an=a₁r^(n-1)という規則が見えます。
一般項の公式an=a₁r^(n-1)は「初項a₁からr倍をn-1回繰り返した値」という意味であり、指数が(n-1)であることに注意が必要でしょう。
等比数列の漸化式
等比数列は漸化式(隣接する項の関係式)を使っても定義できます。
等比数列の漸化式を示します。
an+1 = r × an(公比r、初項a₁)
これは「次の項=現在の項×公比r」という意味です。
漸化式から一般項を求めるには、an+1/an = rという形に変形して等比数列であることを確認し、一般項公式を適用します。
漸化式は数列の定義を隣接する項の関係で表したものであり、等比数列の漸化式はan+1=r×anと極めてシンプルな形をしているでしょう。
等比数列の和の公式
続いては、等比数列の和(総和)の公式を確認していきます。
和の公式とその導き方
等比数列の初項から第n項までの和Snの公式は以下のとおりです。
等比数列の和の公式を示します。
r≠1のとき:Sn = a₁(1-rⁿ)/(1-r) = a₁(rⁿ-1)/(r-1)
r=1のとき:Sn = na₁(全項が等しい場合は項数×初項)
公式の導き方(r≠1の場合):
Sn = a₁ + a₁r + a₁r² + … + a₁r^(n-1) …①
rSn = a₁r + a₁r² + … + a₁r^(n-1) + a₁rⁿ …②
①-②:Sn – rSn = a₁ – a₁rⁿ
Sn(1-r) = a₁(1-rⁿ)
Sn = a₁(1-rⁿ)/(1-r)
和の公式の導き方は「r倍した式を引くことでほとんどの項が消える」というシンプルなアイデアに基づいており、この証明の方法自体が重要な考え方でしょう。
無限等比級数との関係
|r|<1(公比の絶対値が1未満)のとき、等比数列の無限和(無限等比級数)が収束します。
無限等比級数の公式を示します。
|r|<1のとき:S∞ = a₁/(1-r)
|r|≧1のとき:級数は発散します(和は存在しない)。
例:初項1、公比1/2の無限等比級数:1 + 1/2 + 1/4 + 1/8 + … = 1/(1-1/2) = 2
無限等比級数はnを無限大に近づけたときの和であり、|r|<1のときrⁿ→0となるため有限値に収束するという仕組みでしょう。
この無限等比級数は微積分・解析学の基礎である無限級数の最も基本的な例として重要です。
シグマ記号を使った等比数列の和の表現
等比数列の和はΣ(シグマ)記号を使って表すこともできます。
Σ[k=1 to n] a₁r^(k-1) = a₁(1-rⁿ)/(1-r)(r≠1)という表現はシグマの計算問題でよく登場するパターンであり、等比数列の和の公式と対応していることを理解しておくことが重要でしょう。
シグマの変数変換(k→m=k-1など)で指数の形を整えることで、等比数列の和の公式が適用しやすくなります。
等比数列の性質と応用
続いては、等比数列の重要な性質と実際の応用を確認していきます。
等比数列の性質
等比数列にはいくつかの重要な性質があります。
等比数列において、任意の3項a, b, cについてb²=acが成り立つ(等比中項の条件)という性質は等差数列の等差中項2b=a+cと対をなす重要な性質でしょう。
また、等比数列の各項の対数をとると等差数列になるという性質もあります(log(aₙ) = log(a₁) + (n-1)log(r))。
この対数変換の性質は、等比数列を対数グラフ上で直線として表現できることを意味します。
実際の応用例
等比数列は実社会の多くの場面でモデルとして活用されます。
銀行の複利計算(元金×(1+金利)ⁿ)・人口の幾何学的増加・放射性物質の崩壊(半減期)・コンピューターの2進法表現(2ⁿ)などが等比数列で表現できる代表的な現象でしょう。
これらの現象がすべて「掛け算の繰り返し(乗法的変化)」という共通の構造を持つことが、等比数列が自然界・社会科学で広く応用される理由です。
| 項目 | 等差数列 | 等比数列 |
|---|---|---|
| 定義 | 隣り合う2項の差が一定(公差d) | 隣り合う2項の比が一定(公比r) |
| 一般項 | an = a₁ + (n-1)d | an = a₁ × r^(n-1) |
| 和の公式 | Sn = n(a₁+an)/2 | Sn = a₁(1-rⁿ)/(1-r)(r≠1) |
| 漸化式 | an+1 = an + d | an+1 = r × an |
| 中項条件 | 2b = a+c(等差中項) | b² = ac(等比中項) |
まとめ
本記事では、等比数列の定義と意味、等差数列との違い、一般項の公式、和の公式とその証明、無限等比級数、重要な性質と応用を解説しました。
等比数列は「各項が一定の比(公比r)で変化する数列」であり、一般項an=a₁r^(n-1)と和の公式Sn=a₁(1-rⁿ)/(1-r)を正確に使いこなすことが重要です。
複利計算・人口増加・半減期など実社会の幅広い現象に等比数列が登場するでしょう。
等比数列の定義・公式・性質を深く理解することは、高校数学から大学数学・応用数学・金融工学まで幅広い分野での問題解決に不可欠な重要な数学的基礎といえます。