売上予測や需要予測を行う際、過去のデータをどのように扱えばよいか悩んだ経験はありませんか。
そんなときに役立つ統計手法のひとつが指数平滑法です。
本記事では指数平滑法の計算方法は?公式や求め方も解説(平滑化定数:α(アルファ):具体例:n乗など)というテーマで、基本の公式から平滑化定数αの決め方、具体的な計算例までをわかりやすく整理していきます。
数式が苦手な方でも理解できるよう、エクセルでの計算手順や実例も交えてご紹介いたします。
需要予測や在庫管理、売上分析などの業務にぜひお役立てください。
指数平滑法の計算方法の結論
それではまず指数平滑法の計算方法について解説していきます。
結論からお伝えすると、指数平滑法とは直近の実績値に重みをつけながら過去のデータも反映させて将来の値を予測する手法です。
基本となる考え方はとてもシンプルで、直近のデータほど重視し、古いデータになるほど影響力を小さくしていきます。
この重みづけの度合いを決めるのが平滑化定数αです。
基本公式は新しい予測値イコールα×実績値+(1-α)×前回の予測値です
指数平滑法の基本公式は以下のとおりです。
新しい予測値=α×今回の実績値+(1-α)×前回の予測値
この式を見ると、αが大きいほど直近の実績値の影響が強くなり、αが小さいほど過去の予測値の影響が強く残ることがわかります。
つまりαの値ひとつで予測の性質が大きく変わるということです。
計算自体は四則演算のみで完結するため、専門的な統計ソフトがなくても実行できるのが特徴でしょう。
平滑化定数αの決め方が計算のポイント
αの値は0から1の間で設定します。
一般的には0.1から0.3程度の値がよく使われますが、これは業種やデータの変動幅によって調整が必要です。
変動が激しい市場であればαを大きめに、安定した市場であればαを小さめに設定するのが基本的な考え方といえるでしょう。
αの選び方こそが指数平滑法の予測精度を左右する最大のポイントです。
エクセルでも簡単に計算できます
指数平滑法はエクセルの分析ツールを使えば数クリックで計算できます。
関数を直接入力する方法もあり、どちらも大きな手間はかかりません。
後述するエクセルでの具体的な手順も参考にしてください。
指数平滑法とは何か
続いては指数平滑法とはそもそも何かという基本部分を確認していきます。
指数平滑法とは、過去の実績データに指数関数的に減少する重みをつけて将来の値を予測する時系列分析の手法です。
需要予測、在庫管理、売上計画など、ビジネスの現場で幅広く活用されています。
移動平均法との違い
時系列予測の手法としてよく比較されるのが移動平均法です。
移動平均法は一定期間のデータを単純平均して予測値とする手法ですが、すべてのデータに同じ重みをつけてしまいます。
一方で指数平滑法は直近のデータに大きな重みをつけるため、急な変化への追従性が高いという特徴があります。
| 比較項目 | 移動平均法 | 指数平滑法 |
|---|---|---|
| 重みづけ | すべてのデータに均等 | 直近のデータほど重視 |
| 必要なデータ量 | 比較的多い | 少なくても計算可能 |
| 急な変化への対応 | やや遅れる | 比較的早く反映される |
| 計算の手軽さ | 簡単 | やや工夫が必要 |
需要予測や在庫管理での活用シーン
指数平滑法は小売業の需要予測や製造業の在庫管理などで頻繁に用いられています。
例えば季節商品の発注数を決める際、直近の販売動向を反映しやすい指数平滑法は非常に相性がよい手法です。
需要の急増や急減が起きやすい商材ほど、この手法の恩恵を受けやすいといえるでしょう。
メリットとデメリット
指数平滑法のメリットは計算がシンプルで、少ないデータ量でも予測を始められる点です。
一方でデメリットもあります。
αの設定次第で予測精度が大きくぶれてしまう点、そして急激なトレンド変化や季節性を捉えにくい点には注意が必要でしょう。
用途によっては後述する二次指数平滑法など、応用的な手法との使い分けも検討したいところです。
指数平滑法の計算式(公式)を詳しく解説
続いては指数平滑法の計算式について詳しく確認していきます。
指数平滑法には基本となる一次指数平滑法と、トレンドを考慮した二次指数平滑法があります。
一次指数平滑法の公式
一次指数平滑法の公式は先述したとおりです。
Ft=α×At-1+(1-α)×Ft-1
Ftは今期の予測値、At-1は前期の実績値、Ft-1は前期の予測値を表します。
この式を繰り返し展開していくと、過去の実績値がαの累乗、つまりn乗の形で重みづけされていることがわかります。
二次指数平滑法(トレンドを考慮)の公式
一次指数平滑法だけでは、右肩上がりや右肩下がりのトレンドがあるデータにうまく対応できない場合があります。
そこで用いられるのが二次指数平滑法です。
トレンド成分を別途計算し、予測値に加味することでより実態に近い予測ができるようになります。
St=α×Xt+(1-α)×St-1
Tt=α×(St-St-1)+(1-α)×Tt-1
予測値=St+Tt
数式だけを見ると複雑に感じるかもしれませんが、要はレベル成分とトレンド成分をそれぞれ指数平滑化しているだけです。
n乗を使った加重の考え方
一次指数平滑法の式を過去にさかのぼって展開すると、次のような形になります。
Ft=α×At-1+α(1-α)×At-2+α(1-α)2乗×At-3+…
ここで(1-α)のn乗という形が登場します。
nが大きくなる、つまり過去にさかのぼるほど(1-α)の累乗が小さくなり、重みがどんどん減っていく仕組みです。
これが指数平滑法という名前の由来にもなっています。
平滑化定数α(アルファ)の設定方法
続いては指数平滑法の要となる平滑化定数αの設定方法を確認していきます。
αの値をどう設定するかで、予測結果は大きく変わってきます。
αの値が1に近いほど直近のデータを重視した予測になります。
反対にαの値が0に近いほど過去の予測値を重視した、変動の少ない滑らかな予測になります。
この特性を理解したうえでαを選ぶことが、精度の高い予測につながります。
αの値による予測への影響
αを大きく設定すると、直近の変化に敏感に反応する予測になります。
需要が急変するようなケースでは有効ですが、ノイズにも反応しやすくなるため予測値が不安定になりやすいという側面もあるでしょう。
逆にαを小さく設定すると予測は滑らかになりますが、変化への反応が遅れてしまいます。
αを大きくする場合と小さくする場合
どのような場面でαを大きくし、どのような場面で小さくすべきなのでしょうか。
市場の変動が激しい商品や、キャンペーンなどで需要が大きく動く商材はαを大きめに設定するのが適しています。
一方で、需要が比較的安定している定番商品はαを小さめに設定し、滑らかな予測を重視するとよいでしょう。
業種別のαの目安
実務での参考として、業種ごとのαの目安を表にまとめました。
| 業種・商材 | 需要変動の傾向 | αの目安 |
|---|---|---|
| アパレル(トレンド品) | 変動が大きい | 0.3~0.5 |
| 日用品・定番食品 | 比較的安定 | 0.1~0.2 |
| 季節商品 | 季節ごとに急増減 | 0.3~0.4 |
| 耐久消費財 | 非常に安定 | 0.05~0.15 |
あくまで目安ではありますが、自社データで複数のαを試算し、実績との誤差が最小になる値を選ぶのが最も確実な方法です。
指数平滑法の具体例で計算してみる
続いては指数平滑法の具体例を使って、実際に手を動かしながら計算方法を確認していきます。
数式だけではイメージしにくい部分も、具体例を通せば理解が深まるはずです。
実際の売上データを使った計算例
ある店舗の月間売上データを例に、指数平滑法で翌月の予測値を計算してみましょう。
αは0.3とします。
| 月 | 実績値(万円) | 予測値(万円) |
|---|---|---|
| 1月 | 100 | ― |
| 2月 | 120 | 100 |
| 3月 | 110 | 106 |
| 4月 | 130 | 107.2 |
3月の予測値の計算例
106=0.3×120+0.7×100
4月の予測値の計算例
107.2=0.3×110+0.7×106
このように前月の実績値と前月の予測値を使って、次の予測値を順番に計算していきます。
一度手順を覚えてしまえば、決して難しい計算ではありません。
エクセル関数を使った計算手順
エクセルで指数平滑法を計算する場合、分析ツールの指数平滑という機能を使うと便利です。
データタブから分析ツールを選択し、指数平滑を選ぶだけで自動的に予測値の列を作成してくれます。
減衰率にはαではなく(1-α)の値を入力する点に注意してください。
関数を自分で組む場合は、セル参照を使って先述の公式をそのまま入力していけば同様の結果が得られます。
計算結果の見方と活用方法
計算した予測値は、そのまま発注数や人員配置の目安として活用できます。
ただし予測値と実績値の差、いわゆる誤差を定期的に確認することも忘れてはいけません。
誤差が大きい場合は、αの値を見直すサインといえるでしょう。
予測して終わりではなく、実績と照らし合わせて継続的に調整していくことが、指数平滑法を実務で活かすコツです。
まとめ
今回は指数平滑法の計算方法は?公式や求め方も解説(平滑化定数:α(アルファ):具体例:n乗など)というテーマで解説してきました。
指数平滑法は、直近の実績値ほど重視しながら将来の値を予測するシンプルかつ実用的な手法です。
基本公式は新しい予測値イコールα×実績値+(1-α)×前回の予測値であり、αの値によって予測の性質が大きく変わります。
トレンドを考慮したい場合は二次指数平滑法も検討してみるとよいでしょう。
エクセルを使えば計算自体は難しくないため、まずは自社データで試算してみてはいかがでしょうか。
αの調整を重ねながら、自社に合った精度の高い予測モデルを作り上げていきましょう。