労働安全衛生マネジメントシステムという言葉を耳にしたことはありませんか。
職場の安全と健康を守るための仕組みとして、多くの企業で導入が進んでいます。
とはいえ、具体的にどのような仕組みなのか、ISO45001とはどう違うのか、疑問に思う方も多いでしょう。
本記事では、労働安全衛生マネジメントシステムとは?導入方法も!(OSHMS:ISO45001:労働安全:仕組みなど)というテーマに沿って、基本的な考え方から具体的な導入ステップまでを詳しく解説していきます。
労働災害の防止や職場環境の改善に取り組みたい担当者の方は、ぜひ最後までご覧ください。
労働安全衛生マネジメントシステムとは何か
それではまず労働安全衛生マネジメントシステムとは何かについて解説していきます。
労働安全衛生マネジメントシステムとは、事業者が自主的かつ継続的に労働災害の防止と職場環境の改善に取り組むための管理の仕組みです。
英語ではOccupational Safety and Health Management Systemと表記され、頭文字をとってOSHMSと呼ばれることが一般的です。
結論からお伝えすると、OSHMSの本質は、事故が起きてから対応する対症療法ではなく、事故が起きる前にリスクを見つけて潰していく予防型の管理体制にあります。
単発的な安全対策とは異なり、方針の決定から評価、見直しまでを一連の流れとして繰り返すことが特徴です。
労働災害を未然に防ぐための管理の仕組み
OSHMSの最大の目的は、労働災害を未然に防ぐことにあります。
従来の安全管理は、事故やヒヤリハットが発生した後に原因を調べて対策を講じる、いわば後追い型が中心でした。
一方でOSHMSは、事故が起きる前に潜在的な危険を洗い出し、リスクの大きさに応じて優先順位をつけて対策を進める点が大きく異なります。
危険源を特定するプロセスをリスクアセスメントと呼び、これがOSHMSの土台となっています。
職場に潜む危険を可視化することで、誰が見ても同じ基準で安全対策を判断できるようになるでしょう。
PDCAサイクルによる継続的改善が核心
OSHMSの仕組みを支えているのが、計画、実行、評価、改善を繰り返すPDCAサイクルです。
方針を定め計画を立てるPlan、計画に沿って実際に対策を実行するDo、実施状況や効果を確認するCheck、結果をもとに見直しを行うActという四つの段階を継続的に回していきます。
例えば、ある工場でフォークリフトの接触事故のリスクが見つかったとします。
その場合、通行区分の明確化という対策を計画し、実際に区画線を設置して実行します。
一定期間後に事故件数や作業員の声を確認し、効果が不十分であれば追加の対策を検討します。
このように一度きりで終わらせず、繰り返し改善を続けることこそがOSHMSの核心といえるでしょう。
労働安全衛生法とOSHMSの位置づけ
日本国内では、労働安全衛生法にもとづいて事業者に一定の安全衛生管理体制が義務付けられています。
OSHMSは、この法令遵守を土台としながら、それだけにとどまらない自主的な取り組みを促す枠組みとして位置づけられています。
厚生労働省は労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針を示しており、多くの企業がこれを参考にしながら独自の仕組みを構築しています。
法令が最低限の基準を定めるものだとすれば、OSHMSはそれを上回る水準を自主的に目指すための仕組みといえるでしょう。
法令順守だけに頼らない企業姿勢が、結果として労働災害の減少につながっていきます。
OSHMSの基本的な仕組みと構成要素
続いてはOSHMSの基本的な仕組みと構成要素を確認していきます。
OSHMSは大きく分けて、方針の表明、体制の整備、リスクアセスメント、目標設定、実施計画、そして評価と見直しという要素で構成されています。
それぞれの要素がどのように連動しているのか、順を追って見ていきましょう。
方針の表明と体制の整備
OSHMSの出発点となるのが、事業者による安全衛生方針の表明です。
経営トップが自ら安全衛生を経営上の重要課題として位置づけ、社内外に明確に発信することが求められます。
方針が定まったら、次にその方針を実行するための体制を整備します。
安全衛生の責任者や担当者を明確にし、現場の作業員にいたるまで役割分担を周知することが欠かせません。
トップダウンの意思表示と現場を巻き込んだ体制づくり、この両輪がそろって初めて仕組みが機能し始めるでしょう。
リスクアセスメントと目標設定
体制が整ったら、職場に潜む危険性や有害性を洗い出すリスクアセスメントを実施します。
危険源の特定、リスクの見積もり、優先順位の決定という流れで進めるのが一般的です。
リスクアセスメントの結果をもとに、具体的で測定可能な安全衛生目標を設定します。
例えば、休業災害件数を前年比で一定割合減らすといった数値目標を掲げる企業も少なくありません。
目標が曖昧なままでは、後の評価段階で成果を判断しづらくなってしまいます。
実施計画から評価・見直しまでの流れ
目標が定まったら、それを達成するための具体的な実施計画を策定します。
いつまでに、誰が、何を行うのかを明確にした計画表を作成することが望ましいでしょう。
計画を実行した後は、内部監査やシステム監査を通じて実施状況を評価します。
評価の結果、目標未達成の項目や新たな課題が見つかった場合は、方針や計画そのものを見直します。
この一連の流れを繰り返すことで、仕組み自体が少しずつ成熟していきます。
ISO45001との関係性
続いてはOSHMSと深いつながりを持つISO45001との関係性を確認していきます。
OSHMSという概念そのものと、その国際規格版であるISO45001は混同されがちですが、それぞれの位置づけを整理しておきましょう。
ISO45001とはどのような国際規格か
ISO45001とは、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。
2018年に国際標準化機構によって発行され、それまで各国や業界団体が独自に運用してきた基準を統一する役割を果たしています。
品質マネジメントのISO9001や環境マネジメントのISO14001と同様、ハイレベルストラクチャーと呼ばれる共通の枠組みに沿って構成されているのが特徴です。
これにより、複数のマネジメントシステムを同時に運用している企業でも、統合的に管理しやすくなっています。
OSHMSとISO45001の共通点と違い
OSHMSという言葉自体は、PDCAサイクルにもとづく安全衛生管理の考え方全般を指す広い概念です。
一方でISO45001は、その考え方を具体的な要求事項として体系化した国際規格という位置づけになります。
つまり、ISO45001はOSHMSという大きな枠組みの中の、認証取得が可能な一つの具体的な形式と捉えるとわかりやすいでしょう。
下記の表で両者の違いを整理してみます。
| 項目 | OSHMS | ISO45001 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 安全衛生管理の考え方全般 | 国際規格として体系化されたもの |
| 認証 | 指針にもとづく自主運用が中心 | 第三者機関による認証取得が可能 |
| 適用範囲 | 国内の指針や独自基準に準拠 | 世界共通の要求事項に準拠 |
| 導入の自由度 | 企業の実情に合わせやすい | 要求事項への適合が必要 |
このように、OSHMSは考え方の土台であり、ISO45001はその具体的な実践形式の一つと理解しておくとよいでしょう。
認証取得のメリット
ISO45001の認証を取得すると、対外的に安全衛生管理への取り組み姿勢を客観的に証明できます。
取引先や顧客からの信頼獲得、入札条件の充足、従業員の安心感向上など、得られるメリットは多岐にわたります。
特に重要なのは、認証取得のプロセス自体が社内の安全衛生管理を体系的に見直すきっかけになるという点です。
認証はゴールではなく、継続的改善のスタートラインと捉えることが大切でしょう。
取得後も定期的な審査が行われるため、仕組みを形骸化させずに運用し続ける動機づけにもなります。
労働安全衛生マネジメントシステムの導入方法
続いては本題である労働安全衛生マネジメントシステムの導入方法を確認していきます。
導入は大きく、準備段階、実施段階、運用と改善の段階という三つの流れで進めていくのが一般的です。
| 段階 | 主な内容 |
|---|---|
| 準備段階 | 方針決定、推進体制の構築、目的の共有 |
| 実施段階 | リスクアセスメント、目標設定、実施計画の策定 |
| 運用段階 | 対策の実行、モニタリング、ヒヤリハット収集 |
| 見直し段階 | 内部監査、マネジメントレビュー、計画の改訂 |
導入前の準備と方針決定
導入の第一歩は、経営トップによる安全衛生方針の決定です。
なぜ導入するのか、何を目指すのかという目的を明確にし、社内全体で共有することが欠かせません。
次に、推進体制を構築します。
専任の担当者や委員会を設置し、各部署から現場の状況を吸い上げられる仕組みを作ることが望ましいでしょう。
準備段階で体制が曖昧なままだと、後の運用段階で責任の所在が不明確になりやすい点には注意が必要です。
リスクアセスメントの実施手順
準備が整ったら、いよいよ現場のリスクアセスメントに着手します。
まずは作業ごとに潜む危険性や有害性を洗い出し、リストアップしていきます。
例えば高所作業であれば墜落や転落、化学薬品を扱う作業であれば中毒や皮膚障害といった具合に、作業内容ごとに想定されるリスクを整理します。
次に、それぞれのリスクについて発生の可能性と被害の重大性から評価点をつけ、優先順位を決定します。
優先度の高いリスクから順に、除去、低減、管理という対策を検討し、実施計画に落とし込んでいく流れです。
運用開始後のモニタリングと改善
計画にもとづいて対策を実行した後は、定期的なモニタリングが欠かせません。
日常的なパトロールやヒヤリハット報告の収集を通じて、現場の実態を継続的に把握します。
一定期間ごとに内部監査を行い、システムが計画どおりに機能しているかを確認しましょう。
監査結果は経営層にも共有し、必要に応じて方針や目標そのものを見直すマネジメントレビューを実施します。
この繰り返しこそが、OSHMSを形だけのものにせず、実効性のある仕組みとして根付かせる鍵となるでしょう。
導入することで得られるメリットと注意点
続いては労働安全衛生マネジメントシステムを導入することで得られるメリットと、気をつけておきたい注意点を確認していきます。
労働災害の減少と生産性向上
OSHMSを導入した企業では、労働災害の発生件数が減少したという報告が数多くあります。
危険源を事前に把握し対策を講じることで、事故そのものの発生を抑えられるためです。
事故が減れば、それに伴う作業の中断や労災対応にかかる時間も減り、結果として生産性の向上にもつながっていきます。
安全は生産性と対立するものではなく、むしろ生産性を支える土台だと考えると理解しやすいでしょう。
従業員の安全意識向上と企業イメージ
リスクアセスメントの過程で現場の従業員が参加する機会が増えるため、自然と一人ひとりの安全意識が高まっていきます。
自分たちで危険を見つけて対策を考えるという経験が、当事者意識を育てるのでしょう。
また、安全衛生への取り組みを積極的に発信することで、求職者や取引先からの評価向上にもつながります。
働きやすい職場というイメージは、人材確保が難しい昨今において大きな強みになるはずです。
導入時に注意すべきポイント
一方で、導入にあたっては注意すべき点もいくつかあります。
まず、書類作成や手続きが目的化してしまい、現場の実態と乖離した形骸的な仕組みになってしまうケースが見られます。
OSHMSはあくまで労働災害を減らすための手段であり、書類を整えること自体が目的ではありません。
この点を経営層から現場まで共通認識として持っておくことが重要です。
また、導入初期は現場の負担が増えやすいため、担当者だけに任せきりにせず、全社的な協力体制を築くことも欠かせないでしょう。
業種や企業規模による導入のポイント
続いては業種や企業規模によって異なる、労働安全衛生マネジメントシステム導入のポイントを確認していきます。
OSHMSは製造業や建設業だけのものと思われがちですが、実際にはあらゆる業種に応用できる仕組みです。
製造業や建設業における導入のポイント
製造業や建設業では、機械や重機による挟まれ、巻き込まれ、墜落といった重大な労働災害のリスクが高い傾向にあります。
そのため、作業手順の標準化や、設備そのものの安全対策を組み合わせて進めることが重要でしょう。
特に建設現場は工程ごとに作業内容や協力会社が変わるため、元請けと下請けが情報を共有しやすい仕組みづくりが欠かせません。
定期的な合同パトロールや安全大会の開催も、現場全体の意識をそろえるうえで効果的です。
オフィスワークやサービス業における導入のポイント
オフィスワークが中心の業種では、大きな事故よりも腰痛や転倒、メンタルヘルスの不調といったリスクが目立ちます。
そのため、身体的な安全対策に加えて、メンタルヘルス対策や長時間労働の是正も安全衛生管理の一部として組み込む必要があるでしょう。
接客業や運輸業では、顧客対応時のストレスや交通事故のリスクも無視できません。
業種特有のリスクを丁寧に洗い出すことが、実効性のある仕組みづくりの第一歩になります。
中小企業でも取り組みやすい進め方
OSHMSと聞くと大企業向けの大掛かりな仕組みという印象を持つ方もいるかもしれません。
しかし、中小企業であっても、規模に見合った形で段階的に取り組むことは十分に可能です。
例えば、最初から全社的な認証取得を目指すのではなく、まずは特定の部署や工程に絞ってリスクアセスメントを試験的に導入する方法があります。
小さな成功体験を積み重ねながら、徐々に対象範囲を広げていくやり方も現実的な選択肢でしょう。
厚生労働省や労働基準協会などが提供する無料の相談窓口や助成金制度を活用するのも、中小企業にとって有効な手段です。
まとめ
ここまで、労働安全衛生マネジメントシステムとは何か、そして導入方法について解説してきました。
OSHMSとは、事業者が自主的かつ継続的にリスクアセスメントとPDCAサイクルを回しながら労働災害の防止に取り組む仕組みです。
ISO45001はその考え方を国際規格として体系化したものであり、認証取得を通じて対外的な信頼獲得にもつなげられます。
導入にあたっては、方針の決定から体制整備、リスクアセスメント、実施計画、モニタリングと見直しまでを一連の流れとして継続することが何より大切です。
書類作成が目的化しないよう気をつけながら、現場の声を反映した実効性のある仕組みづくりを目指していきましょう。
労働安全衛生マネジメントシステムとは?導入方法も!(OSHMS:ISO45001:労働安全:仕組みなど)という視点を踏まえ、自社に合った形での導入をぜひ検討してみてください。