開集合は、位相空間や距離空間を学び始めると最初に出会う重要な概念です。
言葉だけでは抽象的に感じやすい一方で、点の周囲に少し余裕を持たせられる集合と考えると、定義の意味が見えやすくなります。
この記事では、距離空間におけるε近傍から出発し、内点、閉集合、位相空間での定義までを順序立てて解説します。
数直線や平面の具体例も交えながら、問題を解く際にどこを確認すればよいかを整理していきましょう。
開集合の基本的な定義

それではまず、開集合の定義と最初に押さえたい考え方について解説していきます。
各点の周囲に余裕がある集合
距離空間において開集合とは、集合に含まれるどの点を選んでも、その点の周囲にある十分小さな範囲を集合の中へ完全に入れられる集合です。
この周囲の範囲を表す言葉がε近傍であり、開集合を理解する鍵になります。
たとえば実数全体の集合Rで、区間(0, 1)を考えてみましょう。
0より大きく1より小さい任意の実数を選んだとき、その数から少しだけ左右に動いても、0と1の間にとどまる幅を選べます。
この性質があるため、(0, 1)は開集合です。
開集合かどうかは、端点が含まれるかだけではなく、各点の近くに集合の外へ出ない小さな範囲があるかで判断します。
実数xを中心とする半径εの開近傍は、(x-ε, x+ε)です。
εは0より大きい実数であり、点xからの距離がε未満となる点を集めます。
ε近傍を使った数式での表現
距離空間Xに距離dが定められているとします。
点xを中心とする半径εの開球、またはε近傍は、d(x, y)<εを満たす点y全体の集合です。
記号ではBε(x)のように書かれることがあります。
集合Uが開集合であるための条件は、Uに属する任意の点xについて、ある正のεが存在し、Bε(x)がUに含まれることです。
大切なのは、εの大きさはすべての点で共通でなくてよい点です。
端に近い点では小さなεを選び、中央付近では大きめのεを選べる場合があります。
開集合の判定では、各点ごとに適切なεを見つけられるかを考えます。
開集合の条件は、集合のすべての点に対して同じ半径を使うという意味ではありません。
点ごとに半径を変えてよいため、境界の近くでは非常に小さなε近傍を取ることになります。
開区間と開集合の関係
実数全体Rでよく使われる開区間(a, b)は、a<x<bを満たす実数x全体からなる集合です。
区間の両端aとbを含まないため、内部のどの点にも少しの余白があります。
そのため、開区間は標準的な距離d(x, y)=|x-y|に関して開集合となります。
一方で、[a, b]のような閉区間は、通常の実数の距離では開集合ではありません。
端点aを選ぶと、aを中心とするどんな小さなε近傍にもaより小さい数が入ってしまい、集合の外へ出るためです。
なお、開集合という名称は、見た目に隙間が空いているという意味ではありません。
集合に属する各点の局所的な性質を述べる用語だと理解するのが適切でしょう。
距離空間におけるε近傍
続いては、距離空間とε近傍の役割を確認していきます。
距離関数が満たす条件
距離空間とは、点どうしの近さを測る距離関数が備わった集合です。
距離関数dは、二つの点xとyに対して0以上の実数d(x, y)を対応させます。
さらに、同じ点どうしの距離だけが0であること、順序を入れ替えても距離が変わらないこと、寄り道しても直接の距離より短くならないことを満たします。
最後の条件は三角不等式と呼ばれ、d(x, z)≦d(x, y)+d(y, z)と表されます。
実数では絶対値による距離、平面では二点間の通常の長さが代表例です。
距離の測り方が変われば、同じ集合でも開集合かどうかが変化することがあります。
開集合は集合だけで決まるものではなく、どの距離や位相を使うかと一体で決まる概念です。
開球と閉球の違い
半径εの開球は、中心からの距離がε未満の点を集めた集合です。
これに対して閉球は、中心からの距離がε以下の点を集めた集合を指します。
実数直線では、開球は開区間、閉球は閉区間に対応します。
名称が似ているため混同しやすいものの、距離が境界値と等しい点を含むかどうかが違います。
| 対象 | 実数直線での形 | 境界の点 | 通常の距離での性質 |
|---|---|---|---|
| 開球 | (x-ε, x+ε) | 含まない | 開集合 |
| 閉球 | [x-ε, x+ε] | 含む | 一般には開集合でない |
| 開区間 | (a, b) | aとbを含まない | 開集合 |
| 閉区間 | [a, b] | aとbを含む | 閉集合 |
ただし、閉球が常に閉集合になるかどうかは、距離空間としての性質を確認して考えます。
標準的な距離空間では閉球は閉集合ですが、開集合であるとは限りません。
具体例による判定方法
集合U=(-2, 3)を実数全体Rの部分集合として考えます。
Uの任意の点xに対し、xから-2までの距離と3までの距離のうち小さい方よりも小さな正の数εを取れます。
するとxを中心とするε近傍はUから外れません。
したがってUは開集合です。
一方、V=[-2, 3)では、-2がVに含まれます。
しかし-2を中心とするどのε近傍にも-2より小さい実数が入り、その点はVに属しません。
よってVはRにおいて開集合ではありません。
集合U=(-2, 3)でx=2.8を選ぶ場合を考えます。
εを0.1とすれば、(2.7, 2.9)はUに含まれます。
εを0.3とすると3.1が含まれるため、Uの内部に収まりません。
内点と内部の考え方
続いては、開集合の判定と深く関係する内点と内部を確認していきます。
内点の定義
集合Aに含まれる点xが内点であるとは、xを中心とするあるε近傍が丸ごとAに含まれることです。
つまり、点xの周囲を少し広げても集合Aの外側へ出ない場合、その点はAの内点となります。
開集合は、含まれるすべての点が内点である集合と言い換えられます。
この言い換えを使うと、開集合の定義が整理しやすくなります。
集合Aが開集合であることと、Aのすべての点がAの内点であることは同じ意味です。
たとえば閉区間[0, 1]では、0と1以外の点は内点です。
ただし0と1は内点ではないため、閉区間全体は開集合になりません。
内部が表す最大の開集合
集合Aの内点をすべて集めた集合を、Aの内部と呼びます。
内部は通常、int AやAの上に小さな丸を付けた記号で表されます。
内部は必ず開集合であり、かつAに含まれる開集合の中で最大のものです。
閉区間[0, 1]の内部は(0, 1)になります。
有理数全体Qを実数全体Rの部分集合として考える場合、Qの内部は空集合です。
どの有理数の近くにも無理数が存在するため、有理数だけからなる小さな開区間を作れないからです。
集合そのものに多くの点があっても、周囲を含める余地がなければ内部は空集合になり得ます。
内点は、その点が集合に属するだけでは足りません。
点の周りにある小さな開近傍まで含めて、初めて内点と判断できます。
境界点との区別
境界点とは、どれだけ小さな近傍を取っても、集合Aに属する点と属さない点の両方が入る点です。
閉区間[0, 1]では、0と1が境界点です。
開区間(0, 1)でも、0と1は境界点になります。
ここで注目したいのは、境界点が集合に属するかどうかは集合ごとに異なる点です。
開区間の境界点は集合に属さず、閉区間の境界点は集合に属します。
いずれの場合も、境界点の周囲には集合の内外が混在するため、通常は内点になりません。
図形や不等式で集合が与えられた問題では、等号の有無と境界の扱いを確認すると判断が速くなります。
位相空間での開集合
続いては、距離を使わない位相空間での開集合を確認していきます。
位相の公理
位相空間では、距離を先に定める代わりに、どの部分集合を開集合と呼ぶかを規則として指定します。
集合X上の位相とは、Xの部分集合からなる集まりで、空集合とX自身を含みます。
さらに、任意個の開集合の和集合が開集合であること、有限個の開集合の共通部分が開集合であることを満たします。
この条件を満たす開集合の集まりを位相と呼びます。
位相が与えられた集合Xを位相空間といい、距離空間は位相空間の代表的な例です。
位相空間では、開集合は距離から導くものではなく、公理を満たす集合族として定められます。
距離から作られる位相
距離空間では、開球の和集合として表せる集合を開集合と定められます。
この方法で得られる開集合全体は、位相の公理を満たします。
そのため、距離空間を考えることは、対応する位相空間を考えることにもつながります。
一方で、すべての位相空間が距離から作られるわけではありません。
距離で測れない場合でも、近傍、内部、閉集合、連続性といった概念を位相だけで扱える点が、位相空間の大きな特徴です。
抽象的に見えても、連続性を本質的に捉えるための共通言語になっています。
離散位相と密着位相の例
同じ集合Xでも、選ぶ位相によって開集合は大きく変わります。
離散位相では、Xのすべての部分集合を開集合とします。
この場合、どの一点からなる集合も開集合であり、すべての点が孤立しているような見方になります。
反対に、空集合とX自身だけを開集合とする位相は密着位相と呼ばれます。
密着位相では、空集合でもX全体でもない部分集合は開集合ではありません。
| 位相の種類 | 開集合 | 一点集合 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| 通常の実数の位相 | 開区間の和集合など | 開集合でない | 距離に基づく自然な近さ |
| 離散位相 | すべての部分集合 | 開集合 | 最も細かい位相 |
| 密着位相 | 空集合と全体集合のみ | Xが一点の場合を除き開集合でない | 最も粗い位相 |
この比較から、開集合という言葉は図形の見た目だけでは判断できないことが分かります。
閉集合と補集合の関係
続いては、開集合と対になる閉集合、補集合との関係を確認していきます。
閉集合の定義
位相空間Xの部分集合Fについて、XからFを除いた補集合が開集合であるとき、Fを閉集合と呼びます。
閉集合は、必ずしも端点を含む区間だけを指す言葉ではありません。
空集合と全体集合は、どちらも開集合であり、同時に閉集合でもあります。
このように開集合でも閉集合でもある集合は、開閉集合と呼ばれます。
実数全体Rでは、[a, b]、半直線[a, ∞)、一点集合などが閉集合の例です。
閉集合かどうかは、補集合が開集合かを調べると簡潔に判定できます。
開集合と閉集合の演算規則
開集合の任意和は開集合です。
また、開集合の有限共通部分も開集合になります。
これを補集合の法則と組み合わせると、閉集合の任意共通部分は閉集合であり、閉集合の有限和も閉集合であると分かります。
ただし、閉集合の任意和が常に閉集合になるわけではありません。
たとえば実数直線で、各自然数nに対する一点集合{1/n}は閉集合です。
これらをすべて合わせた集合に0を加えない場合、0が集積点になるため閉集合ではなくなります。
無限個の演算では、有限個の場合と規則が異なることに注意が必要です。
開集合UとVについて、U∪Vは開集合です。
開集合UとVについて、U∩Vも開集合です。
一方で、無限個の開集合の共通部分は開集合とは限りません。
集積点と閉包の考え方
点xのどんな近傍にも、x自身とは異なる集合Aの点が存在するとき、xをAの集積点と呼びます。
集合Aとそのすべての集積点を合わせたものが閉包です。
閉包は、Aを含む最小の閉集合と捉えられます。
開区間(0, 1)の閉包は[0, 1]です。
端点0と1は開区間に含まれませんが、どちらの近くにも(0, 1)の点が存在するため、閉包には加わります。
内部は内側で確保できる部分、閉包は境界まで含めて補った部分と考えると整理しやすいでしょう。
開集合、閉集合、内部、閉包は互いに関連する概念です。
内部は集合に含まれる最大の開集合であり、閉包は集合を含む最小の閉集合です。
開集合を用いた問題の解き方
続いては、開集合を問う問題での確認手順を整理していきます。
不等式で与えられた集合の確認
実数やユークリッド空間で集合が不等式によって与えられる場合、厳密不等号か等号を含むかを確認します。
たとえばx<3で表される集合は、(-∞, 3)なので開集合です。
x≦3で表される集合は、3を含むため開集合ではありません。
二変数の場合も同様です。
xの二乗とyの二乗の和が1未満である点の集合は、原点中心で半径1の開円板となり、開集合です。
これに対して、1以下である点の集合は円周を含む閉円板であり、通常の距離では開集合ではありません。
厳密不等号で表される連続関数の逆像は、開集合を作る代表的な形です。
各点から境界までの距離
具体的な集合が開集合か調べるときは、任意の点を一つ選び、その点と境界の距離を考える方法が有効です。
境界までの距離が正なら、それより小さい半径の開球は集合内に収まります。
開区間(a, b)に属するxでは、x-aとb-xはいずれも正です。
この二つのうち小さい方の半分をεに選べば、安全にε近傍を区間へ含められます。
この考え方は、円の内部、球の内部、多角形の内部などにも応用できます。
ただし、境界そのものを含む点では、境界までの距離が0になるため、この方法で正のεを取れません。
連続関数の逆像による判定
開集合を効率よく示す道具として、連続関数の逆像があります。
連続関数fについて、値域側の開集合Vの逆像fの逆像Vは定義域側で開集合になります。
たとえばf(x)=xの二乗+yの二乗は平面上で連続です。
実数の開区間(-∞, 1)の逆像は、xの二乗+yの二乗<1を満たす点全体です。
したがって、単位円の内部は開集合だと分かります。
高次元の問題や複雑な不等式でも、連続関数としてまとめられるかを考えると見通しがよくなります。
開集合の問題では、各点のε近傍を直接示す方法と、連続関数の逆像を使う方法を使い分けると効率的です。
初歩的な区間では前者、式が複雑な集合では後者が特に役立ちます。
開集合の要点まとめ
開集合とは、集合に含まれるすべての点について、その周囲に集合内へ収まるε近傍を取れる集合です。
実数全体では開区間が代表例であり、端点を含む閉区間は通常開集合になりません。
内点をすべて集めたものが内部であり、集合が開集合であることは全点が内点であることと同じです。
距離空間では距離と開球を使って開集合を定義し、位相空間では開集合の集まりそのものを公理として定めます。
閉集合は補集合が開集合となる集合であり、内部や閉包、境界点とも密接に関係します。
問題を解く際には、境界を含むか、各点で正のεを選べるか、連続関数の逆像として表せるかを順に確認するとよいでしょう。
開集合の考え方を身につけると、連続性、コンパクト性、収束、位相的な性質へ進む際の土台が安定します。