開集合は、位相空間論を学ぶ際に最初に押さえたい中心的な概念です。
実数直線上の開区間のように身近な例から始まりますが、集合の和集合や共通部分、連続写像、近傍、閉集合など、多くの概念を統一して扱う土台にもなります。
この記事では、開集合の定義と基本的な性質を整理し、位相の公理から導かれる定理や計算時の注意点まで、例を交えて分かりやすく解説します。
開集合の意味と基本的な性質

それではまず開集合の意味と、最初に覚えるべき性質について解説していきます。
位相空間における開集合の定義
集合 X に対して、その部分集合の集まり τ が与えられているとします。
この τ が位相の公理を満たすとき、組 X と τ を位相空間と呼び、τ に属する各部分集合を開集合といいます。
言い換えると、開集合とは、あらかじめ定めた位相に含まれる集合です。
ここで重要なのは、開いているかどうかは集合の見た目だけでは決まらない点でしょう。
同じ集合であっても、どの位相を採用するかによって開集合になったり、ならなかったりします。
位相空間では、集合 X とその部分集合族 τ を考えます。
τ が位相であり、U が τ に属するとき、U は X の開集合です。
記号では U ∈ τ と表します。
たとえば実数全体 R に通常の位相を入れた場合、開区間(a,b)は開集合です。
一方で閉区間[a,b]は通常の位相では開集合ではありません。
ただし、離散位相では R のすべての部分集合が開集合になるため、閉区間も開集合として扱われます。
実数直線で考える開区間と近傍
実数直線で開集合を理解するには、各点の周囲に少しだけ余裕を持たせられるかを考える方法が便利です。
集合 U が R の開集合であるとは、U に含まれる任意の点 x に対して、x を中心とする小さな開区間が U に完全に収まることを意味します。
この小さな開区間は、点 x の近傍と呼ばれます。
たとえば(0,1)の中の 0.5 を選んだなら、0.4 から 0.6 までの範囲は(0,1)に含まれます。
端点に近い 0.01 を選んでも、半径を十分小さく取れば周囲の開区間を集合内に収められます。
これに対して[0,1]では、点 0 の左側まで含む小さな開区間を集合内へ入れることができません。
この差が、端点を含むかどうかだけでは説明しきれない開集合の本質です。
実数直線上では、集合のすべての点が集合の内側にいるように見えるとき、その集合は開集合です。
境界の点を含むかではなく、各点の周りに近傍を取れるかで判定することが大切です。
開集合と閉集合の補集合による関係
開集合を理解するときは、閉集合との関係も合わせて確認すると整理しやすくなります。
位相空間 X の部分集合 F について、補集合 X から F を除いた集合が開集合である場合、F を閉集合といいます。
したがって、閉集合は開集合の補集合として定義される集合です。
実数直線上の[a,b]は閉集合であり、その補集合は a より小さい実数全体と b より大きい実数全体を合わせた開集合になります。
空集合と全体集合 X は、どの位相でも開集合です。
さらにその補集合もそれぞれ X と空集合になるため、空集合と全体集合は閉集合でもあります。
開集合と閉集合は必ず反対の性質を持つわけではなく、両方である集合や、どちらでもない集合も存在します。
位相の公理と和集合および共通部分
続いては、開集合を支える位相の公理と集合演算のルールを確認していきます。
全体集合と空集合に関する公理
位相 τ が満たすべき最初の条件は、空集合と全体集合 X が τ に含まれることです。
つまり、空集合と X は必ず開集合になります。
これは例外的な約束ではなく、後で扱う和集合や補集合の議論を安定させるための基本条件です。
空集合には点が存在しないため、近傍による開集合の判定に反する点もありません。
全体集合 X は、どの点の近傍を取っても X の中に入るため、直感的にも開集合と考えられます。
この公理によって、位相空間の議論では最小の集合と最大の集合を常に利用できます。
任意個の和集合に関する性質
開集合の最も重要な性質の一つが、任意個の開集合の和集合は開集合になるという規則です。
有限個に限らず、無限個の開集合を集めた場合でも成立します。
たとえば、すべての自然数 n に対する開区間(−n,n)を考えると、それらの和集合は実数全体 R です。
R は開集合なので、無限個の和集合でも問題なく扱えることが分かります。
開集合 Uα を任意の添字 α で並べたとき、その和集合 ∪Uα は開集合です。
一つでも多くの開集合のどれかに入っていれば、和集合の点になります。
近傍の考え方でも、この性質は自然に説明できます。
和集合の中の点は、少なくとも一つの開集合に含まれており、その開集合の中に点の近傍が存在するためです。
その近傍は和集合にも含まれるので、和集合は開集合になります。
有限個の共通部分に関する性質
もう一つの公理は、有限個の開集合の共通部分が開集合になることです。
二つの開集合 U と V なら、U と V の共通部分も開集合になります。
たとえば(0,3)と(1,5)の共通部分は(1,3)であり、これは開集合です。
ただし、ここで有限個という条件を落とさないことが重要です。
無限個の開集合の共通部分は、一般には開集合とは限りません。
開区間(−1/n,1/n)を n が自然数全体にわたって共通部分に取ります。
すべての区間に入る点は 0 だけなので、共通部分は集合{0}です。
通常の実数直線では{0}は開集合ではありません。
無限和集合は開集合であり、無限共通部分は必ずしも開集合でないという違いは、定理の証明や反例を作る場面で頻繁に使われます。
開集合から導かれる基本定理
続いては、位相の公理を使って導ける基本定理を確認していきます。
閉集合の和集合と共通部分の法則
閉集合については、開集合の法則を補集合へ移すことで対応する定理が得られます。
補集合の和集合と共通部分を入れ替えるド・モルガンの法則を使うと、任意個の閉集合の共通部分は閉集合になります。
また、有限個の閉集合の和集合も閉集合です。
この関係を表にまとめると、開集合と閉集合の違いを見失いにくくなります。
| 対象 | 任意個の和集合 | 有限個の共通部分 |
|---|---|---|
| 開集合 | 開集合 | 開集合 |
| 閉集合 | 一般には保証されない | 閉集合 |
| 閉集合の有限個の場合 | 閉集合 | 閉集合 |
たとえば閉区間[−n,n]を n ごとに和集合へ取ると R になり、これは閉集合です。
一方で[1/n,1]を n 全体で和集合に取ると(0,1]となり、通常の位相では閉集合ではありません。
内部と閉包による開集合の判定
集合 A に含まれる開集合をすべて集めて和集合にしたものを、A の内部と呼びます。
内部は A の内側にある最大の開集合であり、A の記号の上に小さな丸を付けて表すことがあります。
集合 A が開集合であるための必要十分条件は、A の内部が A 自身と一致することです。
この見方を使うと、複雑な集合でも開いている部分だけを取り出せます。
反対に、A を含む閉集合をすべて共通部分にしたものが A の閉包です。
閉包には集合の点だけでなく、近づくことのできる境界点や極限点も含まれます。
内部は開集合を取り出す操作であり、閉包は閉集合へ広げる操作と覚えると分かりやすいでしょう。
境界と極限点に関する見方
集合 A の境界とは、A にも補集合にも近づける点の集まりです。
実数直線上の開区間(a,b)の境界は、端の二点 a と b になります。
開集合では、その内部の各点について集合の外へ出ない近傍を取れます。
しかし境界点では、どれほど小さな近傍を取っても、集合内と集合外の両方の点が現れます。
開集合の境界は、通常はその開集合に含まれません。
ただし一般の位相空間では、図形的な直感だけに頼らず、補集合と近傍の定義に戻って判定する姿勢が必要です。
極限点も重要な関連語です。
点 x の任意の近傍に、x とは異なる A の点が必ず存在するとき、x は A の極限点と呼ばれます。
開集合、閉集合、内部、閉包、境界、極限点は互いに結び付いているため、単独ではなく一組の概念として理解することをおすすめします。
連続写像と逆像における開集合
続いては、連続写像の定義で開集合がどのように働くのかを確認していきます。
逆像を用いた連続性の定義
位相空間 X から位相空間 Y への写像 f を考えます。
f が連続写像であるとは、Y の任意の開集合 V に対して、その逆像 f の逆像 V が X の開集合になることです。
ここで扱うのは像ではなく、開集合の逆像である点に注意しましょう。
実数関数で習う連続性は、この位相的な定義を実数直線に適用したものとして理解できます。
f が連続である条件は、Y の任意の開集合 V に対して fの逆像V が X の開集合となることです。
開集合を引き戻しても開集合であれば、写像は連続です。
この定義では、点ごとの極限計算を行わなくても、空間全体の構造として連続性を扱えます。
そのため、距離を持たない一般の位相空間にも連続写像の概念を拡張できます。
開写像と閉写像の違い
連続写像と似た用語として、開写像と閉写像があります。
開写像とは、X の開集合を写した像が Y の開集合になる写像です。
閉写像とは、X の閉集合を写した像が Y の閉集合になる写像を指します。
連続写像は開集合の逆像に関する性質であり、開写像は開集合の像に関する性質なので、同じ意味ではありません。
たとえば定数関数は多くの場合に連続ですが、開集合の像が一点集合になり、その一点集合が開集合でないため、開写像にはならないことがあります。
連続性と開写像性は、像と逆像を区別して考えることが理解の近道です。
合成写像と同相写像の性質
連続写像 f と連続写像 g を合成した写像も連続です。
これは開集合の逆像を二回取る操作が、合成写像の逆像を取る操作と一致するためです。
連続性が合成で保たれることにより、複数の変換を経る空間の関係も扱いやすくなります。
さらに、全単射であり、その写像と逆写像の両方が連続であるとき、その写像を同相写像と呼びます。
同相写像で結ばれた二つの空間は、位相的には同じ形として扱われます。
長さや角度が変わっても、切れたり貼り合わされたりせずに連続的に変形できる関係を捉える概念です。
同相写像は、開集合の構造を失わずに空間を対応させる写像です。
図形の見た目よりも、近傍や連続性が保たれるかを重視する考え方につながります。
開集合を扱う際の例題と注意点
続いては、開集合の判定や定理の利用で迷いやすい点を確認していきます。
通常の位相と離散位相の比較
位相が変われば、開集合の集まりも変わります。
通常の実数直線では開区間が代表的な開集合ですが、離散位相ではすべての部分集合が開集合です。
反対に、空集合と全体集合だけを開集合とする位相は密着位相と呼ばれます。
| 位相の種類 | 開集合 | 特徴 |
|---|---|---|
| 通常の位相 | 開区間の和集合など | 距離や近傍の直感に近い |
| 離散位相 | すべての部分集合 | 一点集合も開集合 |
| 密着位相 | 空集合と全体集合 | 最も少ない開集合だけを持つ |
この比較から分かるように、開集合という言葉を見たら、まずどの位相の下で考えているかを確認する必要があります。
実数の通常の位相に慣れていると、一般の位相空間で誤った直感を使ってしまうことがあるため注意しましょう。
無限共通部分に関する反例
開集合の無限共通部分が開集合になると考えるのは、よくある誤りです。
開区間(−1/n,1/n)の共通部分が{0}になる例は、この点を示す代表的な反例です。
各区間は 0 の周囲に開いた余白を持っていますが、n が大きくなるほど区間は狭くなります。
すべての区間に同時に入るためには 0 でなければならず、残った一点集合には余白がありません。
このように、無限個の条件を重ねると、開集合が持つ局所的な余裕が失われる場合があります。
定理を使う際には、和集合は任意個、共通部分は有限個という条件を必ず確認してください。
証明問題で役立つ考え方
開集合に関する証明問題では、定義に戻る方法と、既知の定理を使う方法を使い分けます。
和集合が開集合であることを示すなら、任意の点を一つ選び、その点を含む元の開集合を見つける流れが基本です。
有限共通部分を示すなら、各開集合から得られる近傍を比較し、最も小さい範囲を選ぶ考え方が役立ちます。
補集合が現れた場合は、ド・モルガンの法則を使って開集合の性質へ戻すと見通しが良くなります。
集合の記号だけを追うのではなく、任意の点と近傍を意識することが、開集合の証明を安定させるコツです。
開集合の問題では、位相の指定、有限か無限か、像か逆像かの三点を確認してください。
この三点を先に整理すると、定理の取り違えを大きく減らせます。
開集合の性質のまとめ
開集合は、位相として定められた部分集合であり、実数直線では各点の周囲に集合内へ収まる近傍を持つ集合として捉えられます。
位相の公理では、空集合と全体集合が開集合であること、任意個の開集合の和集合が開集合であること、有限個の開集合の共通部分が開集合であることが定められています。
特に、無限個の共通部分では開集合性が失われる可能性がある点は重要です。
閉集合は開集合の補集合として定義され、内部、閉包、境界、極限点といった概念にもつながります。
また連続写像は、終域の開集合の逆像が開集合になるという性質で定義されます。
開集合の性質を理解すると、集合演算、連続性、位相の公理を一つの流れとして学べるようになります。
まずは開区間の例と無限共通部分の反例を自分で計算し、定義と定理の違いを確かめてみてください。