正規部分群の証明方法は?条件や見分け方も!(準同型の核:共役:判定方法:具体例など)
群論で部分群を扱うとき、正規部分群であるかどうかは重要な分岐点になります。
商群を作れるか、準同型写像と結び付けられるか、あるいは対称性をどこまで保てるかが変わるためです。
ただし、定義だけを覚えても、問題の場面でどの判定方法を選べばよいか迷うことがあるでしょう。
この記事では、正規部分群の意味から証明の流れ、準同型の核、共役による判定、具体例までを順序立てて解説します。
正規部分群の証明方法の基本

それではまず、正規部分群を証明するための結論と基本的な考え方について解説していきます。
左右の剰余類が一致する条件
群を G、G の部分群を H とします。
このとき H が G の正規部分群であるとは、G の任意の元 g について、左剰余類 gH と右剰余類 Hg が一致することです。
記号では gH=Hg がすべての g で成り立つ状態を考えます。
正規部分群かどうかは、群の元を左から掛けても右から掛けても、部分群のまとまり方が変わらないかを見る判定と考えると理解しやすいでしょう。
通常の部分群では、積と逆元について閉じていることを確認します。
一方、正規部分群ではさらに、群全体の元による共役で H の中に戻ることまで必要になります。
H が G の正規部分群であるための代表的な条件です。
任意の g∈G と h∈H に対して、ghg−1∈H が成り立ちます。
さらに逆向きも含めて考えれば、gHg−1=H となります。
実際の証明では、gH=Hg を元ごとに直接示す方法もあります。
しかし、共役や準同型の核を使えるなら、そちらの方が計算を短くできる場面も少なくありません。
証明方法を選ぶ順序
問題文に準同型写像が登場するなら、まず核である可能性を確認するのが自然です。
核は必ず正規部分群になるため、写像の定義に沿って調べるだけで証明が進みます。
部分群の位数と群の位数が与えられている場合は、指数に注目する方法が有効です。
特に指数が 2 の部分群は、必ず正規部分群になります。
また、対称群のように置換を扱う問題では、共役によって部分群の生成元がどう移るかを見る方法が便利でしょう。
証明を始める前に、問題に与えられた情報が写像、指数、生成元、可換性のどれに近いかを整理することが、効率的な見分け方につながります。
| 問題で目立つ情報 | 優先したい判定方法 | 確認する内容 |
|---|---|---|
| 準同型写像 | 核による証明 | H が ker f と一致するか |
| 指数が 2 | 剰余類による証明 | 左剰余類と右剰余類の個数 |
| 可換群 | 可換性による証明 | gh=hg が常に成り立つか |
| 生成元が与えられる群 | 共役による証明 | 生成元で共役した結果が H に入るか |
| 有限群の位数 | 指数と位数による判定 | 部分群の指数や一意性 |
最初に押さえたい結論
正規部分群を示す際、すべての元について gH と Hg を展開する方法は、定義に忠実で確実です。
ただし、群が大きくなるほど計算量は増えていきます。
そこで、核であること、指数が 2 であること、部分群が一意であること、群が可換であることなどの十分条件を利用します。
正規部分群の証明では、定義を直接使う方法と、正規性が保証される定理を使う方法を使い分けます。
特別な構造が見つかる場合は、すべての元を計算する前に、その構造を優先して確認するとよいでしょう。
なお、正規部分群は記号で H⊲G と表すことがあります。
これは H が G の部分群であり、さらに正規性も持つことを示す記号です。
正規部分群になる条件と見分け方
続いては、正規部分群になる代表的な条件と見分け方を確認していきます。
可換群におけるすべての部分群
G が可換群なら、G の任意の部分群 H は正規部分群です。
可換群では任意の g∈G と h∈H に対して gh=hg となります。
したがって ghg−1=h です。
h はもともと H に属しているため、共役しても H の外へ出ません。
可換群では部分群を見つけた時点で正規性まで自動的に分かるため、証明は非常に短くなります。
整数全体 Z を加法について考えると、Z は可換群です。
nZ の形をした任意の部分群は、Z の正規部分群になります。
加法群では共役に相当する操作が元そのものを変えないためです。
巡回群も可換群なので、巡回群のすべての部分群は正規部分群です。
有限巡回群でも無限巡回群でも、この性質は変わりません。
指数が二である部分群
H の G における指数が 2 であれば、H は正規部分群です。
指数とは、G が H の剰余類によっていくつに分かれるかを表す数です。
指数が 2 のとき、左剰余類は H と H ではないもう一つの剰余類だけになります。
右剰余類についても同じ事情です。
g が H に属するなら gH=H=Hg となります。
g が H に属さないなら、gH も Hg も H 以外の唯一の剰余類となるため、一致します。
よって任意の g について gH=Hg が成り立ちます。
有限群 G において H の位数が G の位数の半分なら、H の指数は 2 です。
ラグランジュの定理により、そのような部分群は直ちに正規部分群と判定できます。
たとえば対称群 S3 の交代群 A3 は位数 3 の部分群です。
S3 の位数は 6 なので、A3 の指数は 2 になります。
一意な位数を持つ部分群
ある位数を持つ部分群が G の中に一つしか存在しない場合、その部分群は正規部分群になります。
理由は、共役によって得られる gHg−1 も H と同じ位数の部分群になるからです。
同じ位数の部分群が H しかないなら、共役後の部分群も H に一致します。
したがって gHg−1=H です。
一意性を利用する方法では、各元の共役計算を省略できる点が大きな利点です。
特に有限アーベル群や Sylow 部分群を学ぶ場面では、この発想が頻繁に登場します。
ただし、位数が同じ部分群が複数ある場合、一意性による判定は使えません。
その場合は核、共役、剰余類など別の条件を調べる必要があります。
準同型の核を用いた証明
続いては、正規部分群の最も重要な例である準同型の核を確認していきます。
核の定義と正規性
群準同型 f を G から K への写像とします。
このとき核は、G の元のうち f によって K の単位元へ写される元全体の集合です。
核は ker f と書かれます。
ker f={g∈G|f(g)=eK}
ここで eK は、写像の行き先である群 K の単位元です。
核は G の部分群であり、さらに必ず G の正規部分群になります。
証明では、g∈G と h∈ker f を任意に取ります。
準同型性から f(ghg−1)=f(g)f(h)f(g)−1 です。
h は核に属するため f(h)=eK となります。
したがって f(ghg−1)=f(g)eKf(g)−1=eK です。
よって ghg−1 は ker f に属し、核の正規性が分かります。
核を探すための着眼点
準同型写像が問題文に明示されていれば、まず単位元へ写る元を求めます。
写像が合同類を与えるものなら、核は合同式で表せることが多いでしょう。
たとえば整数の加法群 Z から剰余類群 Z/nZ への自然な写像を考えます。
整数 a を n で割った余りの類へ写すとき、0 の類へ写るのは n の倍数です。
したがって核は nZ になります。
核として表せる部分群は、個別に正規性を計算しなくてもよいという点が、準同型を使う大きな魅力です。
| 準同型写像の例 | 核 | 正規部分群としての意味 |
|---|---|---|
| Z から Z/nZ への自然な写像 | nZ | n の倍数全体 |
| 行列式写像 GL(n,R)から R の零でない元 | SL(n,R) | 行列式が 1 の可逆行列全体 |
| 符号写像 Sn から {1,−1} | An | 偶置換全体 |
| 剰余写像 Z から Z/mZ | mZ | 合同関係の基準となる部分群 |
商群と第一同型定理
正規部分群が必要になる主要な理由の一つは、商群を定義するためです。
H が G の正規部分群なら、剰余類全体 G/H に群演算を入れられます。
演算は、gH と kH の積を gkH とする形です。
この演算が代表元の選び方に依存しないためには、H の正規性が欠かせません。
第一同型定理では、G/ker f が f の像と同型になります。
つまり核によって、元の群から写像で失われる部分を切り分けられます。
準同型の核は、単に正規部分群の例ではありません。
商群と像を結び付け、群の構造を整理する中心的な役割を持つ集合です。
証明問題では、核であることを示せるかどうかを最初に検討すると、商群に関する問題まで見通しやすくなります。
共役を使った判定方法
続いては、定義に最も近い共役を使った正規部分群の判定方法を確認していきます。
共役による部分群の移り方
g∈G により h∈H を ghg−1 の形へ移す操作を、g による共役と呼びます。
部分群 H 全体にこの操作を行った集合が gHg−1 です。
正規部分群の条件は、どの g を使ってもこの集合が H 自身に戻ることです。
共役は、群の中で部分群が位置を変えても同じ場所に保たれるかを調べる操作と捉えられます。
H が正規でない場合、ある g によって H は別の部分群へ移されます。
この違いは、同じ位数の部分群が複数存在する非可換群で特に目立ちます。
生成元だけを調べる工夫
H がいくつかの元で生成される場合、H のすべての元を一つずつ調べる必要はありません。
H の生成元の共役が H に入ることを示せば、積や逆元についての閉性から、H の任意の元の共役も H に入ると考えられます。
さらに G 自身も生成元で生成されているなら、G のすべての元について計算する代わりに、G の生成元による共役を確認する方法が使えます。
ただし、共役を繰り返した場合にも条件が保たれることを意識して論理を組み立てる必要があります。
置換群では、共役は記号の付け替えとして理解できる場面があります。
そのため、生成元が入れ替わった後に部分群の中へ残るかを追うとよいでしょう。
生成元に着目する方法は、有限個の計算へ圧縮できるため、具体的な群の問題で特に有効です。
片側包含からの証明
正規性を示すには、任意の g∈G について gHg−1⊆H を示す方法があります。
一見すると包含だけで十分なのか疑問に思うかもしれません。
ここで g の代わりに g−1 を使うと、g−1Hg⊆H が得られます。
この両辺を g と g−1 で共役すれば、H⊆gHg−1 となります。
二つの包含を合わせることで、gHg−1=H が導かれます。
共役による証明の実用的な形です。
任意の g∈G、h∈H に対して ghg−1∈H を示します。
逆元 g−1 に同じ議論を適用すれば、等号まで導けます。
この手順は、正規性の定義を使いながらも、集合の等号を直接扱う負担を軽くしてくれます。
具体例で学ぶ正規部分群の判定
続いては、代表的な群を用いて正規部分群の具体例を確認していきます。
対称群における交代群
対称群 Sn は n 個の文字の置換全体からなる群です。
この中で偶置換だけを集めた交代群 An は、Sn の正規部分群になります。
理由は符号写像を用いる方法が分かりやすいでしょう。
各置換を、その符号が 1 か −1 かへ写す写像は群準同型です。
偶置換は符号が 1 となる置換全体なので、An はこの写像の核です。
核は必ず正規部分群であるため、An⊲Sn が分かります。
An の正規性は、偶置換と奇置換の分類が積に対して整合することを反映した性質でもあります。
また、An の Sn における指数は 2 です。
したがって指数 2 の定理からも同じ結論へ到達できます。
二面体群における回転部分群
正 n 角形の対称性から作られる二面体群を Dn とします。
回転だけからなる部分群は、通常 r で生成される巡回部分群です。
反射を s とすると、関係式として srs−1=r−1 が成り立ちます。
r−1 は回転部分群に含まれるため、反射による共役を行っても回転部分群から外れません。
回転による共役はもちろん回転部分群を保ちます。
よって回転部分群は Dn の正規部分群です。
この例は、群全体が可換でなくても、特定の部分群は正規になり得ることを示しています。
幾何学的には、反射によって回転の向きは反転しても、回転という操作の種類自体は保たれるという見方ができます。
S3 における正規でない部分群
S3 の部分群 H={e,(12)}を考えます。
H は位数 2 の部分群ですが、正規部分群ではありません。
たとえば g=(123)とすると、g(12)g−1 は(23)になります。
(23)は H に含まれていないため、gHg−1は H と一致しません。
部分群であることと正規部分群であることは別の条件です。
S3 には位数 2 の部分群が複数あり、共役によって互いに移り合います。
一方、位数 3 の部分群である A3 は一つしかなく、しかも指数 2 なので正規です。
| 群 | 部分群 | 判定 | 主な理由 |
|---|---|---|---|
| S3 | A3 | 正規部分群 | 符号写像の核、指数 2 |
| S3 | {e,(12)} | 正規ではない | 共役で別の互換へ移る |
| Dn | 回転部分群 | 正規部分群 | 反射による共役が逆回転 |
| Z | nZ | 正規部分群 | 可換群、剰余写像の核 |
証明で間違えやすいポイント
続いては、正規部分群を証明するときに間違えやすいポイントを確認していきます。
部分群判定との混同
H が正規部分群であることを示すには、最初に H が部分群であることも必要です。
問題によっては H が部分群であることがすでに与えられています。
しかし、単なる部分集合として提示されている場合は、単位元、積、逆元に関する条件を先に確認しなければなりません。
正規性だけを調べても、H がそもそも部分群でなければ正規部分群とは呼べません。
有限部分集合なら、空集合でなく、任意の aとb に対して ab−1が H に属することを示す部分群判定法が便利です。
その後で共役による閉性や、核としての表示を調べる流れになります。
一つの元だけでの判断
ある特定の g について gH=Hg が成り立ったとしても、それだけでは正規性は証明できません。
正規部分群の定義では、G の任意の元について条件が必要です。
反例を示すときは一つの g で十分ですが、正規であると示すときは全体をカバーする論理が求められます。
そのため、生成元、準同型、指数、一意性といった全体を扱える根拠が役立ちます。
反例では具体的な一例、証明では任意性を保証する仕組みを意識すると、論理の方向を取り違えにくくなります。
共役の計算順序
非可換群では ghg−1 と g−1hg は一般に異なります。
どちらも共役の形ではありますが、使う元や向きが異なります。
置換の積では、演算を行う順序にも注意が必要です。
教科書や講義で採用されている置換の合成規則を確認し、右から作用させるのか左から作用させるのかを統一しましょう。
計算が複雑になった場合は、まず一つの文字がどこへ移るかを追う方法が安全です。
共役後の元が H の生成元の積として表せるかを確認すれば、正規性の判断へつながります。
正規部分群の証明方法のまとめ
正規部分群とは、任意の g∈G に対して gH=Hg、または gHg−1=H が成り立つ部分群です。
直接定義で証明することもできますが、準同型の核であること、指数が 2 であること、群が可換であること、同じ位数の部分群として一意であることを使うと、証明を簡潔にできます。
準同型があれば核、位数があれば指数、生成元があれば共役という順に着目すると、問題に合った判定方法を選びやすくなるでしょう。
特に核は必ず正規部分群であり、商群や第一同型定理へ進むための重要な入口です。
対称群や二面体群の具体例では、共役によって部分群が保たれるかを実際に計算すると、定義の意味がより明確になります。
部分群であることの確認と、正規性の確認を分けて考えながら、与えられた群の構造に合う証明方法を選んでいきましょう。