ネットワークを構築・運用する際に避けては通れないのが「ルーティング設定」です。
ルーティング設定とは、ルーターやコンピューターがパケットをどの経路で転送するかを定義する作業のことであり、ネットワーク通信の根幹を担う重要な作業といえます。
設定を誤ると通信障害の原因となるため、正しい手順と確認方法を理解しておくことが不可欠でしょう。
本記事では、スタティックルーティングの基本設定手順から、ルーターでの操作方法・経路の追加・削除・トラブルシューティングまで、わかりやすく解説していきます。
ルーティング設定の基本とスタティックルーティングとは
それではまず、ルーティング設定の基本とスタティックルーティングについて解説していきます。
ルーティング設定には大きく分けて「スタティック(静的)ルーティング」と「ダイナミック(動的)ルーティング」の2種類があります。
スタティックルーティングとは、管理者が手動で経路情報をルーターに登録する方式のことです。
シンプルで処理負荷が低い反面、ネットワーク構成が変わるたびに手動で更新が必要という特徴があります。
小規模ネットワークや変更の少ない固定的な経路に適しており、設定内容が明確なためセキュリティ面でも評価されているでしょう。
スタティックルーティング設定に必要な情報
・宛先ネットワークアドレス:転送したいネットワークのIPアドレス
・サブネットマスク:宛先ネットワークの範囲を指定
・ネクストホップ(ゲートウェイ):次の転送先となるルーターのIPアドレス
・出力インターフェース:パケットを送出するインターフェース名
・アドミニストレーティブディスタンス:経路の信頼度(任意)
これらの情報を正確に入力することで、ルーターは該当する宛先へのパケットを正しく転送できるようになります。
特にネクストホップのIPアドレスは、自分自身が直接到達できるアドレスを指定する必要がある点に注意が必要でしょう。
Cisco機器でのスタティックルーティング設定
Cisco IOS系ルーターでのスタティックルーティング設定の基本コマンドを紹介します。
Cisco IOSでのスタティックルーティング設定例
ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 192.168.1.1
(宛先ネットワーク サブネットマスク ネクストホップ)
デフォルトルートの設定:
ip route 0.0.0.0 0.0.0.0 192.168.0.1
上記コマンドはグローバルコンフィグレーションモードで入力します。
設定後は「show ip route」コマンドでルーティングテーブルを確認し、「S」マークが付いた静的経路として登録されていることを確認しましょう。
設定を永続化するには「copy running-config startup-config」で保存することも忘れないようにしてください。
Linuxでのスタティックルーティング設定
Linuxサーバーでスタティックルーティングを設定する際は、「ip route add」コマンドを使用します。
Linuxでのスタティックルーティング設定例
ip route add 192.168.2.0/24 via 192.168.1.1 dev eth0
デフォルトルートの設定:
ip route add default via 192.168.0.1
設定の確認:
ip route show
ただし、上記コマンドによる設定は再起動すると消えてしまいます。
永続的に設定を保持するには、ディストリビューションに応じたネットワーク設定ファイルへの記述が必要になるでしょう。
Ubuntuでは「/etc/netplan/」配下の設定ファイルに、CentOS/RHELでは「/etc/sysconfig/network-scripts/」配下に記述します。
Windowsでのスタティックルーティング設定
Windowsでスタティックルーティングを設定するには、管理者権限のコマンドプロンプトを使用します。
Windowsでのスタティックルーティング設定例
route add 192.168.2.0 mask 255.255.255.0 192.168.1.1
永続的な経路の追加(-pオプション):
route add 192.168.2.0 mask 255.255.255.0 192.168.1.1 -p
設定の確認:
route print
「-p」オプションを付けることで再起動後も経路が保持される永続的な設定となります。
Windows Server環境ではルーティングとリモートアクセスサービス(RRAS)を使って、よりGUIベースでルーティング設定を管理することも可能でしょう。
ルーティング設定の確認方法とトラブルシューティング
続いては、ルーティング設定の確認方法とトラブルシューティングの手順を確認していきます。
設定後は必ず動作確認を行い、意図した通りに経路が設定されているかを確認することが重要です。
ルーティング設定の確認コマンド
各OSでのルーティング設定確認コマンドをまとめます。
| OS・機器 | 確認コマンド | 内容 |
|---|---|---|
| Cisco IOS | show ip route | ルーティングテーブル全体を表示 |
| Cisco IOS | show ip route static | 静的経路のみ表示 |
| Linux | ip route show | ルーティングテーブルを表示 |
| Linux | ip route get [宛先IP] | 特定宛先への経路を表示 |
| Windows | route print | ルーティングテーブル全体を表示 |
| Windows | netstat -r | ルーティングテーブルを別形式で表示 |
Cisco IOSでは「show ip route」の出力でスタティック経路は「S」、OSPFは「O」、RIPは「R」、接続済みは「C」というコードで識別できます。
経路が正しく設定されているにもかかわらず通信できない場合は、pingやtracerouteコマンドで実際の通信経路を確認するとよいでしょう。
pingとtracerouteによる疎通確認
ルーティング設定後の基本的な疎通確認にはpingコマンドを使用します。
pingとは、指定したIPアドレスへICMPエコーリクエストを送信し、応答を確認することで通信の疎通を確認するツールです。
pingが通らない場合は、tracerouteコマンド(Windowsではtracert)を使ってパケットがどこまで到達しているかを確認します。
tracerouteの出力でどのホップで止まっているかを確認することで、問題のある機器やルーティング設定を特定できるでしょう。
疎通確認コマンド例
ping 192.168.2.1 → 宛先への疎通確認
tracert 192.168.2.1(Windows)→ 経路のホップを確認
traceroute 192.168.2.1(Linux)→ 経路のホップを確認
ルーティング設定のトラブルシューティング手順
ルーティング設定でよく発生するトラブルとその対処法を整理しておきましょう。
最もよくある問題が「経路が登録されているのに通信できない」というケースです。
この場合、戻りの経路(リターンルート)が設定されているかどうかを確認することが重要です。
通信は行きだけでなく戻りの経路も必要なため、双方向の経路が設定されていないと通信は成立しません。
また、ネクストホップのIPアドレスが到達可能かどうか、インターフェースが正しく有効になっているかどうかも確認ポイントです。
Cisco機器では「show interface」でインターフェースの状態を、「debug ip routing」でルーティングの変化をリアルタイムで確認することもできるでしょう。
経路の追加・削除・変更の方法
続いては、ルーティング設定における経路の追加・削除・変更の方法を確認していきます。
運用中のネットワークでは、新しいサブネットの追加や障害対応などで経路を変更する機会が生じることがあります。
経路の追加手順
新しいネットワークセグメントを追加する際は、その宛先への経路をルーティングテーブルに登録します。
追加前に必ず既存の経路と重複・競合がないかを確認することが重要です。
同じ宛先に対して複数の経路を設定する場合は、メトリックやアドミニストレーティブディスタンスを調整して優先順位を明確にしておきましょう。
設定後は必ずpingで疎通確認を行い、期待通りの動作になっているかを検証することが基本手順となります。
経路の削除手順
不要になった経路を削除する際は、削除対象の経路を正確に指定することが大切です。
経路削除コマンド例
Cisco IOS:no ip route 192.168.2.0 255.255.255.0 192.168.1.1
Linux:ip route del 192.168.2.0/24
Windows:route delete 192.168.2.0
削除後は「show ip route」や「route print」でテーブルから消えていることを確認します。
誤った経路を削除するとネットワーク障害につながるため、削除作業は慎重に行うことが必要でしょう。
本番環境での作業前には、必ず変更手順と切り戻し手順を準備しておくことを強くおすすめします。
フローティングスタティックルートとは
ルーティング設定の応用として「フローティングスタティックルート」という技術があります。
フローティングスタティックルートとは、通常は使用されない予備の経路をあらかじめ設定しておき、メインの経路が消えた際に自動的に有効化されるバックアップ経路のことです。
アドミニストレーティブディスタンスを通常より大きな値に設定することで、メイン経路が存在する間は使用されず、メイン経路が消えたときに初めて有効になる仕組みです。
冗長性を確保したいネットワーク設計において非常に有用な技術といえるでしょう。
まとめ
本記事では、ルーティング設定の基本手順から、Cisco・Linux・Windowsでの設定コマンド・確認方法・トラブルシューティングまで幅広く解説してきました。
ルーティング設定はネットワーク通信の根幹を担う重要な作業であり、正確な手順と確認作業が不可欠です。
設定後は必ずルーティングテーブルの確認とpingによる疎通テストを行い、意図した通りに動作しているかを検証する習慣をつけましょう。
トラブルが発生した際は戻りの経路やインターフェースの状態を確認することが基本的なアプローチとなるでしょう。
本記事を参考に、ルーティング設定の基礎をしっかりと身につけてください。