sinのn乗を含む積分は、三角関数の積分のなかでも頻出するテーマです。
指数が小さい場合は加法定理や半角公式で処理できますが、nが文字のまま現れる問題では、漸化式や部分積分を使う考え方が重要になります。
定積分ではウォリス積分も役立ち、偶数乗と奇数乗で解法が変わる点も見逃せません。
この記事ではsinのn乗の積分公式、導き方、具体例、計算時の注意点までを順に整理します。
sinのn乗の積分の基本的な結論

それではまずsinのn乗の積分の全体像について解説していきます。
不定積分で使う漸化式
sinのn乗の不定積分とは、一般に∫sinnx dxの形を計算することです。
nが2以上なら、部分積分を利用して指数を2ずつ下げる漸化式を作れます。
∫sinnx dx = -sinn-1x cosx+(n-1)∫sinn-2x cos2x dx
cos2x = 1-sin2xを使って整理すると、次の式になります。
∫sinnx dx = -sinn-1x cosx/n+(n-1)/n∫sinn-2x dx
この公式では、n乗の積分をn-2乗の積分へ変換できます。
したがって、奇数乗なら最後はsinxの積分へ、偶数乗なら最後はsin0xの積分へたどり着く流れです。
奇数乗と偶数乗による計算の違い
sinの奇数乗と偶数乗では、使いやすい変形が異なります。
sin2m+1xのような奇数乗では、sinxを一つ残し、残りをsin2xの形にまとめる方法が便利です。
sin2x = 1-cos2xへ変形すれば、cosxを置換する計算につながります。
一方、sin2mxのような偶数乗では、半角公式を繰り返して次数を下げる方法がよく使われます。
奇数乗は置換積分、偶数乗は半角公式や漸化式という整理をしておくと、問題を見た直後に方針を選びやすくなるでしょう。
公式を覚えるよりも大切な考え方
漸化式を暗記するだけでは、符号や係数を間違えやすくなります。
大切なのは、sinnxをsinn-1xとsinxに分け、部分積分で指数を下げる構造を理解することです。
部分積分では、sinn-1xを微分し、sinx dxを積分する組み合わせを選びます。
sinのn乗の積分では、指数を一度に1ずつ下げるのではなく、通常は2ずつ下げます。
この規則を押さえると、漸化式の見た目が複雑でも計算の終点を予測できます。
不定積分では最後に積分定数Cを付けることも忘れないようにしましょう。
漸化式の導出と部分積分
続いては漸化式を作る部分積分の手順を確認していきます。
部分積分で置く要素
In=∫sinnx dxと置くと、計算の見通しがよくなります。
sinnxをsinn-1x sinxと考え、u=sinn-1x、dv=sinx dxと設定します。
するとdu=(n-1)sinn-2x cosx dx、v=-cosxです。
部分積分の公式に代入すると、In=-sinn-1x cosx+(n-1)∫sinn-2x cos2x dxとなります。
ここまではcos2xが残っているため、まだ漸化式として完成していません。
三角関数の基本公式による整理
続いてcos2x = 1-sin2xを代入します。
積分の中身はsinn-2x-sinnxとなるため、Inを含む式に変わります。
In=-sinn-1x cosx+(n-1)(In-2-In)
nIn=-sinn-1x cosx+(n-1)In-2
In=-sinn-1x cosx/n+(n-1)In-2/n
これがsinのn乗の不定積分における基本の漸化式です。
途中でInを左辺へ移項する操作があるので、係数nを落とさないことが重要になります。
漸化式の係数に見られる規則
漸化式を繰り返すと、(n-1)/n、(n-3)/(n-2)のような分数が連続します。
奇数乗の場合は分子に偶数、分母に奇数が現れ、偶数乗の場合は分子に奇数、分母に偶数が現れる傾向があります。
この係数は定積分のウォリス積分でも同じように登場します。
係数の並びを先に確認してから計算すると、途中の約分や転記ミスを減らせます。
漸化式は答えを短くする道具であると同時に、sinの高いべき乗を低いべき乗へ分解する考え方です。
部分積分とsin2x+cos2x=1が結び付いている点を理解しておくと応用しやすくなります。
奇数乗の積分計算
続いてはsinの奇数乗を積分する方法を確認していきます。
sinxを一つ残す変形
sin3x、sin5xのような奇数乗では、sinxを一つ分けて残すのが基本です。
たとえばsin5xなら、sin4x sinxと書き換えられます。
さらにsin4xは、(sin2x)2です。
sin2x = 1-cos2xを使えば、cosxだけで表せる多項式に変換できます。
sinの三乗の積分例
sin3xの積分は、基本的な例として必ず確認しておきたい問題です。
∫sin3x dx = ∫sinx(1-cos2x)dx
t=cosxと置くと、dt=-sinx dxです。
したがって、∫sin3x dx = -cosx+cos3x/3+C
この結果は、漸化式にn=3を入れて計算した場合とも一致します。
微分してsin3xへ戻るかを確認すると、解答の信頼性を高められるでしょう。
sinの五乗以上への応用
sin5xでは、sin4xを(1-cos2x)2へ変えます。
展開すると1-2cos2x+cos4xとなり、あとはcosxの多項式として積分できます。
ただし、指数が大きくなるほど展開計算は長くなります。
そのようなときは、漸化式でsin5xからsin3xへ下げる方法のほうが簡潔な場合もあります。
| 積分する形 | 主な変形 | 使いやすい方法 |
|---|---|---|
| sin3x | sinx(1-cos2x) | cosxへの置換 |
| sin5x | sinx(1-cos2x)2 | 置換または漸化式 |
| sin7x以上 | sinxを残して偶数乗を変形 | 漸化式の活用 |
奇数乗ではsinxを残す理由まで説明できるようにしておくと、類題にも対応しやすくなります。
偶数乗の積分計算
続いてはsinの偶数乗を積分する方法を確認していきます。
半角公式の基本
sinの偶数乗では、sinxを一つだけ残すことができません。
そのため、sin2x = (1-cos2x)/2という半角公式を利用します。
sin2xの積分は、公式を代入すればすぐに計算できます。
∫sin2x dx = ∫(1-cos2x)/2 dx
= x/2-sin2x/4+C
= x/2-sinx cosx/2+C
最後の式はsin2x = 2sinx cosxを使った表し方です。
sinの四乗の積分例
sin4xは、(sin2x)2として半角公式を二乗します。
sin2x = (1-cos2x)/2より、sin4x = (1-2cos2x+cos22x)/4です。
さらにcos22xにも半角公式を使うため、少し計算量が増えます。
最終的には定数項、cos2x、cos4xの和になり、それぞれを積分します。
この方法は確実ですが、式の変形が多いので符号の確認が欠かせません。
漸化式で偶数乗を下げる方法
偶数乗でも、不定積分の漸化式はそのまま使えます。
たとえばI4=-sin3x cosx/4+3I2/4です。
ここへI2の結果を代入すれば、sin4xの積分を求められます。
半角公式は展開型、漸化式は段階型と考えると、二つの手法を使い分けやすくなります。
偶数乗の積分でsinxを無理に残そうとすると、置換後に平方根が現れて複雑になりがちです。
偶数乗を見たら、半角公式か漸化式を選ぶのが自然な流れです。
ウォリス積分と定積分
続いてはsinのn乗を定積分する際に重要なウォリス積分を確認していきます。
零からπまでの定積分
Jn=∫0πsinnx dxと置きます。
この定積分では、先ほどの漸化式を端点に代入すると、sin0とsinπがどちらも0になるため境界項が消えます。
その結果、Jn=(n-1)/n Jn-2というシンプルな漸化式になります。
不定積分よりも計算が整理されるのは、定積分の大きな利点です。
偶数乗と奇数乗の公式
nが偶数か奇数かによって、最後に使う初期値が変わります。
J0=π、J1=2を基準にすると、一般式を作れます。
| 指数の形 | 定積分の結果 | 係数の特徴 |
|---|---|---|
| n=2m | ∫0πsin2mx dx = π(2m-1)!!/(2m)!! | 奇数の積を偶数の積で割る形 |
| n=2m+1 | ∫0πsin2m+1x dx = 2(2m)!!/(2m+1)!! | 偶数の積を奇数の積で割る形 |
!!は二重階乗を表し、2m!!=2m(2m-2)(2m-4)のように2ずつ下げて掛ける記号です。
式を初めて見る場合は、一般式を丸暗記するより、Jn=(n-1)Jn-2/nから確かめると理解が安定します。
ウォリス積分を使う場面
ウォリス積分は、三角関数の定積分だけでなく、円周率を含む評価や極限問題にも登場します。
入試問題や大学初年級の微積分では、sinnxの積分を漸化式で求めた後、nを大きくしたときの性質を考えるケースもあります。
端点でsinが0になるため余分な項が消えることが、ウォリス積分の計算を支えるポイントです。
なお、積分区間が0からπ/2の場合は、0からπまでの結果の半分になります。
sinnxは0からπにかけて対称な形を持つためです。
計算ミスを防ぐ確認方法
続いてはsinのn乗の積分で起こりやすいミスと確認方法を確認していきます。
部分積分の符号の確認
sinxを積分すると-cosxになるため、部分積分では最初の項に負号が付きます。
この負号を見落とすと、以降の計算がすべてずれてしまいます。
部分積分の公式は、∫u dv = uv-∫v duです。
vそのものが-cosxであることと、公式の引き算が重なる点に注意しましょう。
途中式でv=-cosxと明記するだけでも、符号の事故をかなり防げます。
不定積分と定積分の区別
不定積分には積分定数Cが必要ですが、定積分には通常付けません。
また、不定積分の漸化式には-sinn-1x cosx/nが含まれますが、0からπまでの定積分ではこの部分が消えます。
両者の公式を混同すると、不要な項を残したり、必要な項を消したりする原因になります。
不定積分では関数としての原始関数を求めます。
定積分では区間の端点を代入し、数値またはπを含む値として評価します。
問題文に積分記号の上下限があるかを、計算前に必ず確認してください。
微分による最終チェック
不定積分の答えが得られたら、微分して元のsinnxへ戻るか確認するのが確実です。
たとえば-sinn-1x cosx/nを微分すると、積の微分が必要になります。
この確認によって、漸化式の係数やsinとcosの指数を検算できます。
定積分の場合は、sinnxが0以上になる区間なら、答えが負になっていないかも確認材料になります。
公式の暗記、途中式の確認、微分による検算を組み合わせることが、安定した得点につながります。
sinのn乗の積分のまとめ
sinのn乗の積分では、指数が奇数か偶数かを最初に見分けることが大切です。
奇数乗ではsinxを一つ残し、sin2xを1-cos2xへ変えて置換積分を行います。
偶数乗では半角公式を用いるか、漸化式で指数を2ずつ下げる方法が有効です。
不定積分の基本公式は、∫sinnx dx = -sinn-1x cosx/n+(n-1)/n∫sinn-2x dxです。
定積分では境界項が消え、ウォリス積分の漸化式Jn=(n-1)Jn-2/nへ整理できます。
高いべき乗を低いべき乗へ下げるという共通した発想を身に付ければ、sinのn乗の積分は公式を並べただけの問題ではなくなります。
部分積分、半角公式、置換積分を状況に応じて選び、最後は微分や端点代入で確かめていきましょう。