システム開発においてアーキテクチャ設計は、プロジェクト全体の品質・コスト・スピードを左右する最も重要な工程の一つです。
適切なアーキテクチャ設計なくして、保守性の高いシステムの構築は難しいでしょう。
本記事では、システムアーキテクチャの設計方法・アーキテクチャ図の書き方・代表的な構成パターン(3層構造・マイクロサービスなど)・設計で使うツールについて解説していきます。
システムアーキテクチャの設計とは何か?
それではまず、システムアーキテクチャの設計の基本的な意味について解説していきます。
システムアーキテクチャの設計とは、構築するシステムの全体的な構造・コンポーネントの分割方法・コンポーネント間の関係・使用する技術スタックを決定し、ドキュメントとして整理するプロセスです。
アーキテクチャ設計はシステム開発の初期段階で行われますが、プロジェクト全体を通じて参照・更新される「生きたドキュメント」として機能します。
良いアーキテクチャ設計は、以降の詳細設計・実装・テスト・運用のすべての工程を楽にします。
逆に設計段階での誤った判断は、後工程で大きなコストをかけて修正しなければならなくなる「技術的負債」の原因となります。
アーキテクチャ設計で決めるべき主な要素
システムアーキテクチャの設計で決めるべき主な要素を整理します。
アーキテクチャ設計で決めるべき主な要素
1. アーキテクチャスタイル:モノリシック・マイクロサービス・サーバーレス・イベント駆動など
2. 技術スタック:使用するプログラミング言語・フレームワーク・データベース・ミドルウェア
3. コンポーネントの分割方法:どの機能をどのサービス・モジュールに分けるか
4. データの流れ:コンポーネント間でどのようにデータがやり取りされるか
5. インフラ構成:クラウド・オンプレミス・ハイブリッドの選択・ネットワーク構成
6. セキュリティ設計:認証・認可・暗号化・ネットワーク境界の設計
7. スケーリング戦略:水平スケール・垂直スケール・オートスケールの設計
アーキテクチャ図の書き方と種類
続いては、アーキテクチャ図の書き方と種類を確認していきます。
アーキテクチャ設計の成果物として最も重要なのが「アーキテクチャ図(構成図)」です。
アーキテクチャ図はチームのコミュニケーション・ステークホルダーへの説明・新メンバーのオンボーディング・将来の設計変更の検討など、多くの場面で活用されます。
C4モデルによるアーキテクチャ図の体系化
アーキテクチャ図を体系的に描くためのフレームワークとして「C4モデル」が広く使われています。
C4モデルはSimon Brownが提唱したモデルで、抽象度の異なる四つのレベルでシステムを図示します。
C1(Context図)はシステム全体と外部の人・システムとの関係を示す最も抽象度の高い図です。
C2(Container図)はシステムを構成するコンテナ(Webサーバー・APIサーバー・DBなど)とその関係を示します。
C3(Component図)は各コンテナ内部のコンポーネント(モジュール・サービス)の構造を示します。
C4(Code図)はコンポーネント内のクラス・インターフェースレベルの詳細を示します(UMLクラス図に相当)。
C4モデルを使うことで、ステークホルダーに合わせた適切な抽象度のアーキテクチャ図を体系的に作成できます。
アーキテクチャ図を書くためのツール
アーキテクチャ図を作成するためのツールには以下のものがよく使われています。
| ツール名 | 特徴 | 主な用途 |
|---|---|---|
| draw.io(diagrams.net) | 無料・ブラウザベース・豊富なテンプレート | システム構成図・ネットワーク図・フローチャート |
| Miro | リアルタイム共同編集・多機能なオンラインホワイトボード | チームでのアーキテクチャ設計・ブレインストーミング |
| Lucidchart | UML・ネットワーク図・組織図など多彩なテンプレート | 企業向けの本格的なダイアグラム作成 |
| PlantUML | テキストからUML図を自動生成・コードとして管理可能 | シーケンス図・クラス図・コンポーネント図 |
| Microsoft Visio | Office連携・豊富なシェイプライブラリ | 企業の公式文書・システム設計書 |
代表的なシステムアーキテクチャ構成パターン
続いては、代表的なシステムアーキテクチャの構成パターンを確認していきます。
3層アーキテクチャ(Three-Tier Architecture)
3層アーキテクチャは、システムをプレゼンテーション層(フロントエンド)・アプリケーション層(ビジネスロジック)・データ層(データベース)の三つに分割する最も古典的かつ広く使われる構成パターンです。
各層が独立しているため、プレゼンテーション層を変更してもデータ層に影響しないという保守性を持ちます。
Webアプリケーション・業務システムなど多くのシステムで採用されています。
マイクロサービスアーキテクチャの構成図
マイクロサービスアーキテクチャでは、機能ごとに独立したサービスとその間のAPI通信・メッセージキュー・APIゲートウェイを組み合わせた構成図が作成されます。
各マイクロサービスが独自のデータベースを持つ「データベース・パー・サービス」パターンが基本となります。
良いアーキテクチャ図を書くための重要な原則をまとめます。
原則1:目的に合わせた抽象度を選ぶ。経営層向けには概要図、開発者向けには詳細な構成図と使い分けましょう。
原則2:記号・色・線の意味を凡例として明示する。見る人が迷わないよう、図の意味を統一してください。
原則3:最新の状態に保つ。古いアーキテクチャ図は混乱の原因になります。変更のたびに更新するフローを組み込みましょう。
原則4:コードで管理できるツールを活用する。PlantUMLやMermaid.jsを使えばアーキテクチャ図をGitで管理でき、コードの変更と連動させやすくなります。
まとめ
本記事では、システムアーキテクチャの設計の意味・設計で決めるべき要素・C4モデルによるアーキテクチャ図の書き方・ツール・3層アーキテクチャとマイクロサービスの構成パターンについて解説してきました。
システムアーキテクチャの設計はシステム全体の品質を左右する最重要工程であり、適切な設計と明確なアーキテクチャ図が開発チーム全体の効率と成果物の品質を大きく向上させます。
C4モデルとdraw.ioなどのツールを活用して、チーム全員が理解できる明確なアーキテクチャ図を作成・維持することが、良いシステム開発の出発点となるでしょう。