技術(非IT系)

エポキシ樹脂の熱伝導率は?W/m・Kの数値と充填材の影響・用途も解説

当サイトでは記事内に広告を含みます

電子機器や工業製品の設計において、材料の熱伝導性はとても重要な指標のひとつです。

エポキシ樹脂は接着剤・封止材・絶縁材として幅広く使用されていますが、「熱伝導率はどのくらいなのか」「充填材を加えるとどう変わるのか」という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、エポキシ樹脂の熱伝導率は?W/m・Kの数値と充填材の影響・用途も解説というテーマに沿って、数値の目安から充填材による改善方法、実際の用途まで詳しくご説明します。

放熱設計や材料選定に携わる方にとって、ぜひ参考にしていただきたい内容です。

エポキシ樹脂の熱伝導率は約0.2〜0.3 W/m・Kが標準的な数値

それではまず、エポキシ樹脂の熱伝導率の基本的な数値について解説していきます。

エポキシ樹脂は熱硬化性樹脂の一種であり、未充填状態での熱伝導率はおよそ0.2〜0.3 W/m・Kとされています。

これは金属材料と比べると非常に低い値であり、たとえばアルミニウムの熱伝導率が約205 W/m・K、銅が約400 W/m・Kであることを考えると、その差は歴然です。

一方で、エポキシ樹脂は電気絶縁性・耐薬品性・機械的強度に優れており、熱伝導率の低さを補う形で幅広い場面に活用されています。

エポキシ樹脂単体の熱伝導率は0.2〜0.3 W/m・K程度であり、金属と比べて大幅に低い値を示します。放熱用途には充填材(フィラー)の添加が不可欠です。

熱伝導率とW/m・Kの単位について

熱伝導率の単位であるW/m・Kは、「1メートルの厚さの材料を通して1ケルビンの温度差があるときに、1平方メートルあたりを通過する熱量(ワット)」を表します。

値が大きいほど熱を伝えやすく、小さいほど断熱性が高いことを意味します。

エポキシ樹脂の0.2〜0.3 W/m・Kという値は、一般的なプラスチック材料と同様の範囲であり、熱伝導よりも断熱・絶縁用途に適した数値と言えるでしょう。

熱伝導率の目安(代表的な材料との比較)

材料 熱伝導率(W/m・K)
約400
アルミニウム 約205
ステンレス鋼 約15〜20
エポキシ樹脂(未充填) 約0.2〜0.3
一般プラスチック(PET等) 約0.1〜0.3
ガラス 約1.0〜1.1

エポキシ樹脂の種類による熱伝導率の違い

エポキシ樹脂にはビスフェノールA型・ビスフェノールF型・ノボラック型など複数の種類があります。

基本的にはいずれも同程度の熱伝導率を示しますが、硬化剤の種類や架橋密度によって若干の差が生まれることもあります。

たとえば、芳香族系硬化剤を用いた高密度架橋型では、熱伝導率がやや向上するケースも報告されています。

ただし、この差は微小であり、劇的な改善には充填材の活用が主流となっています。

熱伝導率と熱拡散率の関係

熱伝導率と混同されやすい指標に「熱拡散率」があります。

熱拡散率は、材料が温度変化にどれだけ速く対応できるかを示す値であり、熱伝導率を密度と比熱容量の積で割ることで算出されます。

熱拡散率(m²/s)= 熱伝導率(W/m・K)÷(密度(kg/m³)× 比熱容量(J/kg・K))

エポキシ樹脂は比熱容量が比較的高いため、熱拡散率も低くなる傾向があります。

放熱設計においては、熱伝導率だけでなく熱拡散率も合わせて確認することが重要です。

充填材(フィラー)がエポキシ樹脂の熱伝導率に与える影響

続いては、充填材(フィラー)がエポキシ樹脂の熱伝導率に与える影響を確認していきます。

エポキシ樹脂の熱伝導率を向上させる最も一般的な手法は、高熱伝導性のフィラーを配合することです。

フィラーの種類・配合量・粒子形状・分散状態によって、最終的な熱伝導率は大きく変わります。

代表的な熱伝導性フィラーの種類と特徴

熱伝導性フィラーとして広く使用されているのは、窒化アルミニウム(AlN)・酸化アルミニウム(Al₂O₃)・窒化ホウ素(BN)・シリカ(SiO₂)などです。

主な熱伝導性フィラーの比較

フィラー材料 熱伝導率(W/m・K) 特徴
窒化アルミニウム(AlN) 約150〜200 高熱伝導・絶縁性良好
窒化ホウ素(BN) 約60〜300(異方性あり) 高絶縁・低誘電率
酸化アルミニウム(Al₂O₃) 約20〜40 コスト低・汎用性高い
シリカ(SiO₂) 約1〜2 低熱膨張・コスト安
炭化ケイ素(SiC) 約100〜200 高硬度・高熱伝導

フィラーの熱伝導率が高いほど、エポキシ樹脂複合体全体の熱伝導率を引き上げる効果が期待できます。

特に窒化アルミニウムや窒化ホウ素は、電気絶縁性を維持しながら高い熱伝導性を実現できる点で注目されています。

フィラー配合量と熱伝導率の関係

フィラーを多く配合するほど熱伝導率は向上しますが、配合量が増えるにつれて粘度上昇・成形性低下・機械的特性の変化といったデメリットも生じます。

一般的に、フィラー添加量を60〜70 vol%程度まで高めることで、熱伝導率を1〜5 W/m・K程度まで向上させることが可能とされています。

フィラー形状については、球状よりも板状・繊維状の方が熱伝導パスを形成しやすく、効率的に熱伝導率を向上させられる場合があります。

フィラーの分散性と界面熱抵抗の重要性

フィラーをただ混合するだけでは十分な熱伝導率が得られないこともあります。

フィラー粒子間・フィラーとマトリックス樹脂間に存在する「界面熱抵抗」が、熱の流れを妨げる要因となります。

この界面熱抵抗を低減するためには、シランカップリング剤などの表面処理剤によるフィラー表面の改質が効果的です。

また、粒径の異なるフィラーを組み合わせて充填密度を高める「バイモーダル配合」も、熱伝導率向上の手法として広く採用されています。

熱伝導性エポキシ樹脂の主な用途と選定のポイント

続いては、熱伝導性エポキシ樹脂の主な用途と選定のポイントを確認していきます。

充填材を配合した高熱伝導エポキシ樹脂は、電子機器・自動車・航空宇宙・電力機器など、発熱部品の熱管理が求められる様々な分野で活用されています。

電子機器・半導体封止材としての用途

エポキシ樹脂は半導体パッケージの封止材として長年使用されてきました。

近年、半導体の高集積化・高性能化に伴い発熱量が増大しているため、封止材に高熱伝導性が求められるようになっています。

LED照明のパッケージ封止や、パワーデバイス(IGBTやMOSFET)の封止・放熱基板への接着など、熱的信頼性が製品寿命を左右する場面での採用が増えています。

熱伝導率1〜3 W/m・Kクラスの熱伝導性エポキシは、これらの用途に対応できる実用的な選択肢です。

放熱グリース・放熱接着剤・TIM材としての活用

TIM(Thermal Interface Material:熱界面材料)とは、発熱体とヒートシンクの間に充填し、界面の熱抵抗を低減するための材料です。

エポキシ系の放熱接着剤は、接合強度と放熱性を同時に確保できる点が大きな強みです。

シリコーン系TIMと比較すると硬化後の固定力が高く、振動環境下でも安定した熱接触を維持できます。

熱伝導率の目安としては、一般的な用途で1〜3 W/m・K、高性能用途では5 W/m・K以上の製品も市場に存在します。

TIM用途では、熱伝導率だけでなく「接触熱抵抗の低減」「硬化後の密着性」「長期信頼性」も重要な選定指標です。カタログ値の熱伝導率だけで判断せず、実装条件に近い形での評価が推奨されます。

自動車・パワーエレクトロニクス分野での展開

電気自動車(EV)やハイブリッド車(HEV)の普及に伴い、パワーモジュールやバッテリーパックの熱管理が重要課題となっています。

これらの分野では、高電圧・大電流環境下での使用を前提とするため、高熱伝導性と高電気絶縁性の両立が不可欠です。

窒化アルミニウムや窒化ホウ素フィラーを配合した熱伝導性エポキシ樹脂は、このニーズに応える材料として活発に研究・開発が進められています。

将来的には、5〜10 W/m・K以上の高熱伝導エポキシが量産技術として確立されることも期待されているでしょう。

エポキシ樹脂の熱伝導率向上における最新動向と課題

続いては、エポキシ樹脂の熱伝導率向上に向けた最新動向と課題を確認していきます。

材料科学の進歩により、エポキシ樹脂の熱伝導性を飛躍的に向上させる新技術が次々と報告されています。

ナノフィラーとカーボン系材料による高熱伝導化

近年注目されているのが、カーボンナノチューブ(CNT)やグラフェンなどのカーボン系ナノフィラーの活用です。

グラフェンの理論熱伝導率は約3000〜5000 W/m・Kとも言われており、少量の添加でも熱伝導率を大幅に向上できる可能性があります。

ただし、カーボン系材料は導電性を持つため、電気絶縁性が求められる用途には適さないケースもあります。

現在は、ナノフィラーの分散技術・表面修飾技術の改良が研究の中心となっています。

異方性熱伝導と配向制御技術

窒化ホウ素のように異方性の高いフィラーは、粒子の向きによって熱伝導率が大きく変わります。

磁場・電場・せん断力などを利用してフィラーを一方向に配向させる「配向制御技術」により、特定方向への熱伝導率を選択的に高めることが可能です。

この技術は、放熱方向が決まった部品への適用において非常に有効であり、薄型デバイスの熱設計に新たな可能性をもたらしています。

熱伝導性エポキシ樹脂の標準化と評価方法

熱伝導率の測定方法にはレーザーフラッシュ法・定常熱流法・熱線法などがあり、測定方法によって得られる値が異なることがあります。

製品選定の際はカタログ値の測定条件を確認し、実際の使用環境に即した条件での評価結果と比較することが重要です。

また、IECやASTMなどの国際規格に基づいた評価が推奨されており、信頼性の高い比較検討が可能となっています。

まとめ

本記事では、エポキシ樹脂の熱伝導率は?W/m・Kの数値と充填材の影響・用途も解説というテーマに沿って、エポキシ樹脂の基本的な熱伝導率の数値から充填材による改善方法、用途、最新動向までを幅広くご紹介しました。

エポキシ樹脂単体の熱伝導率は約0.2〜0.3 W/m・Kと低い値ですが、適切な熱伝導性フィラーを配合することで大幅な向上が可能です。

用途に応じてフィラーの種類・配合量・分散方法を最適化することが、性能と信頼性を両立するうえで欠かせません。

電子機器の放熱設計・自動車部品・半導体封止など多様な分野でエポキシ樹脂の熱管理材料としての需要は今後も拡大していくでしょう。

材料選定や設計の参考として、ぜひ本記事をお役立てください。