物理学の中でも特に重要な法則のひとつが熱力学第一法則です。
「ΔU=Q-Wという式はどういう意味か」「エネルギー保存則とどう違うのか」「内部エネルギー・仕事・熱量の関係はどうなっているのか」という疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
この記事では、熱力学第一法則の意味・式・内部エネルギー・仕事・熱量の定義・エネルギー保存則との関係まで、物理基礎レベルからわかりやすく解説していきます。
熱力学第一法則とは何か?基本的な結論
それではまず、熱力学第一法則の意味と基本的な結論から解説していきます。
熱力学第一法則とは、「エネルギーは形を変えても消えることなく、総量は常に保存される」というエネルギー保存則を熱力学的な視点で表現した法則です。
熱力学第一法則の式:ΔU = Q – W(またはΔU = Q + W、符号の定義による)。ΔU:内部エネルギーの変化量(J)、Q:系が外部から受け取った熱量(J)、W:系が外部にした仕事(J)。この式は「系の内部エネルギーの変化=外部から受け取った熱量ー外部にした仕事」という関係を表しています。
熱力学第一法則の本質は、熱(Q)・仕事(W)・内部エネルギー(U)がすべてエネルギーとして等価であり、互いに変換できるという点にあります。
これは、ジェームズ・ジュールらの19世紀の実験によって確立された概念であり、永久機関(外部からエネルギーを与えずに永久に仕事をする機械)が不可能であることを示しています。
熱力学第一法則の各量の意味
続いては、熱力学第一法則に登場する内部エネルギー・熱量・仕事の意味を確認していきます。
内部エネルギー(U)とは
内部エネルギーUとは、系を構成する粒子の運動エネルギーと位置エネルギーの総和のことです。
理想気体の内部エネルギーは分子の並進運動エネルギーの総和であり、温度Tに比例します(U=(3/2)NkBT)。
内部エネルギーは状態量(系の状態だけで決まる量)であり、変化量ΔUは過程によらず初期状態と最終状態だけで決まります。
熱量(Q)とは
熱量Qとは、温度差によって系と外部の間でやりとりされるエネルギーの量です。
Qが正(Q>0)のとき、系は外部から熱を受け取っていることを示します。
Qが負(Q<0)のとき、系は外部に熱を放出していることを示します。
熱量は過程量(経路によって値が変わる量)であり、状態量ではありません。
仕事(W)とは
熱力学での仕事Wとは、系と外部の間でやりとりされる力学的なエネルギーのことです。
気体が膨張して外部にする仕事の最も基本的な例は、W = ∫P dV(圧力×体積変化)です。
熱量と同様に仕事も過程量であり、同じ初期状態・最終状態でも経路が異なれば仕事の量は変わります。
熱力学第一法則の式と符号の注意点
続いては、熱力学第一法則の式ΔU=Q-Wの符号と、注意すべきポイントを確認していきます。
符号の定義
熱力学第一法則の式の符号は、Wを「系が外部にした仕事」と定義するか「外部が系にした仕事」と定義するかによって異なります。
| Wの定義 | 式の形 | 主に使われる分野 |
|---|---|---|
| 系が外部にした仕事(Wout) | ΔU = Q – W | 物理学・工学熱力学(日本の高校物理) |
| 外部が系にした仕事(Win) | ΔU = Q + W | 化学・物理化学 |
どちらの定義でも物理的な内容は同じですが、符号のルールを混乱しないよう注意することが重要です。
具体的な計算例
計算例:ある気体が80Jの熱を外部から受け取り、30Jの仕事を外部にした場合の内部エネルギー変化
Q = +80J(熱を受け取った)
W = +30J(外部に仕事をした)
ΔU = Q – W = 80 – 30 = 50J
内部エネルギーが50J増加した
エネルギー保存則との関係
続いては、熱力学第一法則と力学のエネルギー保存則の関係を確認していきます。
力学的エネルギー保存則との違い
力学的エネルギー保存則は、「摩擦などの散逸がない場合、運動エネルギーと位置エネルギーの和は保存される」という法則です。
熱力学第一法則は、力学的エネルギーに加えて熱エネルギー(内部エネルギー)も含めた、より一般的なエネルギー保存則です。
摩擦によって力学的エネルギーが減少しても、それは熱(内部エネルギー)に変換されており、全体としてのエネルギーは保存されます。
永久機関と熱力学第一法則
熱力学第一法則は、「第1種永久機関(外部からエネルギーを与えずに仕事をし続ける機械)が不可能である」ことを示しています。
もしΔU=0(内部エネルギー変化なし)でQ=0(熱の授受なし)のときにW>0(仕事をし続ける)ことができれば、第1種永久機関となりますが、ΔU=Q-Wの式からこれは成立しません。
まとめ
この記事では、熱力学第一法則の意味・式(ΔU=Q-W)・内部エネルギー・熱量・仕事の定義・符号の注意点・エネルギー保存則との関係・永久機関との関連について詳しく解説しました。
熱力学第一法則の核心は、「熱・仕事・内部エネルギーはすべてエネルギーとして等価であり、ΔU=Q-Wというエネルギー収支の関係で結ばれる」というシンプルかつ強力な原理にあります。
符号の定義を正確に理解し、Q・W・ΔUの正負を間違えずに計算する習慣をつけることが、熱力学の問題を正確に解くための鍵となるでしょう。
ぜひこの記事で紹介した法則の意味と計算方法を参考に、熱力学の学習に役立ててください。