廃棄率は、製造業や飲食店、小売業などで発生するロスを数値で把握するための重要な指標です。
しかし、廃棄数量を基準にするのか、金額を基準にするのかによって計算結果や改善策は変わります。
適切に計算すれば、原価の上昇要因や過剰在庫、工程上の不具合を見つけやすくなるでしょう。
この記事では、廃棄率の基本的な計算式、歩留まり率やロス率との違い、在庫管理での活用方法をわかりやすく解説します。
廃棄率の計算方法と基本式

それではまず、廃棄率の計算方法と基本式について解説していきます。
廃棄率が示す内容
廃棄率とは、仕入れた商品、投入した原材料、保有していた在庫のうち、販売や生産に使えず廃棄となった割合です。
食品であれば賞味期限切れ、製造業であれば不良品や加工くず、小売業であれば破損品や売れ残りが主な対象になります。
数値が高いほど、売上につながらないコストが多く発生している状態と考えられます。
廃棄率は単なる損失額ではなく、業務の無駄を見える化するための管理指標として役立ちます。
ただし、廃棄の原因が品質不良なのか、需要予測のずれなのか、保管方法の問題なのかを分けて記録しなければ、改善につながりにくくなります。
数量を使った廃棄率の計算式
もっとも基本的なのは、数量を使って算出する方法です。
廃棄率 = 廃棄数量 ÷ 総投入数量 × 100
たとえば、原材料を1,000個投入し、そのうち40個を廃棄した場合、廃棄率は4パーセントとなります。
40個 ÷ 1,000個 × 100 = 4パーセント
生産数量が大きく異なる月同士を比較するときも、割合に換算すれば状況を公平に確認できます。
一方で、単価の異なる品目を合算する場合、数量だけでは損失の大きさを正確に判断できません。
高額部品や高単価の食材を扱う場合は、金額ベースの廃棄率も併用することが大切です。
金額を使った廃棄率の計算式
金額ベースでは、廃棄した商品の原価や仕入額を基準にして割合を求めます。
金額廃棄率 = 廃棄原価 ÷ 総仕入原価 × 100
総仕入原価が50万円で、廃棄原価が2万5,000円だった場合、金額廃棄率は5パーセントです。
この方法では、少量でも原価の高い商品が廃棄されている問題に気付きやすくなります。
数量の廃棄率と金額の廃棄率を並べると、優先して対策すべき品目が明確になります。
数量は少なくても金額廃棄率が高いなら、発注量、取り扱い方法、検品工程を早めに見直す必要があるでしょう。
廃棄率は、対象範囲を毎回そろえて計算することが重要です。
月ごとに対象品目や原価基準が変わると、数値の比較が難しくなります。
歩留まり率とロス率の違い
続いては、歩留まり率とロス率の違いを確認していきます。
歩留まり率の意味
歩留まり率とは、投入した原材料や部品のうち、良品として完成品に使えた割合を示す指標です。
製造現場では、材料の利用効率や加工精度を確認するために広く使われています。
たとえば、100キログラムの原材料から90キログラムの製品が得られた場合、歩留まり率は90パーセントです。
歩留まり率が高いほど、投入した資源を有効に製品化できていると判断できます。
ただし、完成品に含まれない副産物をどう扱うかによって数値が変わるため、社内で計算ルールを統一する必要があります。
ロス率との関係
ロス率は、投入量に対して失われた量の割合を表す言葉です。
廃棄率と似ていますが、ロス率には加工くず、蒸発、目減り、破損、値引き販売による利益減少など、廃棄以外の損失が含まれる場合があります。
一般的な数量管理では、歩留まり率とロス率の合計が100パーセントになる設計がわかりやすいでしょう。
| 指標 | 主な対象 | 確認したい内容 |
|---|---|---|
| 廃棄率 | 廃棄処分した品目 | 直接的な廃棄ロス |
| ロス率 | 廃棄、目減り、不良、破損など | 工程全体の損失 |
| 歩留まり率 | 良品、販売可能品、完成品 | 投入資源の有効活用 |
廃棄率だけでは把握できない損失を補うために、ロス率と歩留まり率も確認するとよいでしょう。
業種ごとに異なる指標の使い方
飲食業では、食材の廃棄率に加えて、仕込み後の可食部率や売れ残り率を管理します。
製造業では、不良率、再加工率、材料歩留まり率を工程別に追うケースが一般的です。
小売業では、廃棄率だけでなく、値引き率や欠品率も同時に見る必要があります。
値引きで販売できた商品は廃棄を防げた一方、粗利益を圧迫している可能性があるためです。
業種の特性に合わせて複数の指標を組み合わせることが、実態に近い収益管理につながります。
廃棄率を計算する対象範囲
続いては、廃棄率を計算する対象範囲について確認していきます。
原材料と仕掛品の扱い
製造業では、受け入れ時に不良と判定された原材料、加工中に発生した端材、仕様変更で使えなくなった仕掛品などが廃棄対象になります。
ただし、端材を別製品に転用できる場合は、すべてを廃棄として計上すると実態とずれるでしょう。
再利用、売却、リサイクル、廃棄を区分し、それぞれの数量と金額を記録することが重要です。
工程ごとの投入量と排出量を照合すると、どこで廃棄が増えているのかを追跡しやすくなります。
廃棄が発生した工程まで記録する仕組みを作ると、現場の改善活動にもつなげやすくなります。
販売期限切れ商品の扱い
食品や日用品を扱う小売業では、販売期限切れ、品質劣化、パッケージ破損、季節商品の売れ残りなどが主な廃棄要因です。
仕入時点では売れる見込みがあった商品でも、天候、競合店の出店、販売計画の変更によって在庫が残ることがあります。
廃棄率を計算する際は、店舗全体だけではなく、部門、商品カテゴリー、価格帯、曜日別などで分けると有効です。
たとえば生鮮食品の廃棄率が高い場合でも、特定の曜日や時間帯に集中しているなら、発注や値引きのタイミングに改善余地があるかもしれません。
在庫差異との区別
帳簿上の在庫と実在庫が一致しない在庫差異は、必ずしも廃棄とは限りません。
入力漏れ、棚卸しミス、盗難、誤出荷、単位設定の誤りなどが原因になることもあります。
廃棄率を正確に出すためには、廃棄登録と棚卸し差異を別の項目として管理する必要があります。
在庫差異をすべて廃棄として処理すると、原因分析ができなくなります。
廃棄、破損、紛失、入力誤りを区分して集計することが基本です。
正しい在庫数があってこそ、廃棄率の計算結果にも信頼性が生まれます。
廃棄率の活用例と改善策
続いては、廃棄率の活用例と改善策を確認していきます。
飲食店における食材ロスの管理
飲食店では、食材別の廃棄率を確認することで、仕入れ量や仕込み量の適正化を進められます。
野菜の可食部率が低い場合は、下処理の方法や仕入れ規格を見直す余地があります。
調理済み料理の売れ残りが多いなら、提供数、盛り付け量、メニュー構成、時間帯別の販売予測を確認するとよいでしょう。
廃棄量だけを減らそうとして提供量を過度に減らすと、顧客満足度の低下につながる可能性があります。
売上、原価率、客数と一緒に廃棄率を見ることが、無理のない改善につながります。
製造業における不良品削減
製造業では、製品全体の廃棄率だけでなく、工程別、設備別、担当班別、材料ロット別に数値を確認する方法が有効です。
特定の設備で不良が増えている場合、刃具の摩耗、温度条件、位置ずれ、保全不足などが影響しているかもしれません。
不良品を再加工できる場合は、廃棄率だけでなく再加工コストも把握する必要があります。
再加工が多い状態は、表面上の廃棄率が低くても、生産性や納期を悪化させる要因になり得ます。
廃棄率の低下と品質の安定化を同時に目指す視点が欠かせません。
小売業における発注精度の向上
小売業では、商品ごとの廃棄率を需要予測の精度確認に活用できます。
週末だけ廃棄が増える商品なら、発注量を曜日別に調整する方法が考えられます。
天候の変化で販売数が大きく動く商品は、気温や降水確率と過去の販売実績を合わせて確認すると効果的です。
| 廃棄の傾向 | 想定される原因 | 主な改善策 |
|---|---|---|
| 特定曜日に増加 | 曜日別需要の見誤り | 発注基準を曜日ごとに設定 |
| 特定店舗で増加 | 客層や売場構成の違い | 店舗別の販売計画を作成 |
| 高単価品で増加 | 仕入れ過多や販売訴求不足 | 少量発注と販促強化 |
| 期限直前に増加 | 先入れ先出しの不徹底 | 在庫配置と値引き時刻を見直し |
廃棄率の数値を発注担当者だけに任せず、売場担当者とも共有することが改善の近道です。
在庫管理で廃棄率を管理する手順
続いては、在庫管理で廃棄率を管理する手順を確認していきます。
廃棄理由の分類
最初に行いたいのは、廃棄理由の分類です。
期限切れ、品質不良、破損、発注過多、製造ミス、保管不備、返品不可など、現場で使いやすい分類を設定します。
分類が細かすぎると入力が続かず、粗すぎると原因が見えなくなります。
まずは主要な理由を5種類から10種類程度に絞り、運用状況に応じて見直すとよいでしょう。
原因を選択式で記録できるようにすると、集計の負担を抑えられます。
集計期間と基準の統一
廃棄率は、日次、週次、月次など一定の期間で継続して集計します。
日次では異常の早期発見、月次では傾向の把握、年次では季節変動を含めた評価に向いています。
比較する場合は、分母に使う投入数量や仕入原価の定義を統一しなければなりません。
たとえば、仕入基準と売上基準の数値を混在させると、廃棄率の意味があいまいになります。
月次管理の例として、月間廃棄原価を月間仕入原価で割り、100を掛けて金額廃棄率を算出します。
前年同月比や予算比も確認すれば、単月の増減だけでは判断しにくい変化を把握できるでしょう。
目標値の設定と振り返り
目標値は、いきなり極端に低く設定するよりも、過去の実績を基に段階的に設定する方法が現実的です。
たとえば廃棄率が8パーセントの場合、最初は6パーセントを目標にし、改善施策の効果を見ながら次の目標を決めます。
目標未達のときは担当者の責任だけを問うのではなく、発注条件、販売計画、保管設備、作業手順を確認することが大切です。
廃棄率の改善は、数値を下げること自体が目的ではありません。
利益を守りながら、品質、欠品防止、顧客満足とのバランスを取ることが本来の目的です。
廃棄率の計算に関する注意点
続いては、廃棄率の計算に関する注意点を確認していきます。
分母の選び方による違い
廃棄率の分母には、仕入数量、投入数量、製造数量、期首在庫を含む取扱数量など、複数の考え方があります。
どれが正しいかは目的によって異なります。
材料の利用効率を確認したいなら投入数量を、仕入れ判断を見直したいなら仕入数量を分母にする方法が適しています。
店舗や部門を比較する場合は、全拠点で同じ分母を使うことが欠かせません。
値引きと廃棄を混同しない方法
値引き販売は、利益が減少するものの、商品が廃棄されたわけではありません。
廃棄率に値引き品まで含めると、何が原因の損失なのかがわかりにくくなります。
廃棄率、値引き率、粗利益率を別々に管理し、必要に応じてロス率として総合的に確認しましょう。
値引きは廃棄を減らす手段になり得るため、両者の関係を継続して確認することが重要です。
数値だけで判断しない視点
廃棄率が低くても、欠品による販売機会の損失が大きければ、経営上は良い状態とは限りません。
反対に、鮮度や品質を重視する業態では、一定の廃棄が発生することを前提にした運用も必要です。
販売数、欠品数、クレーム件数、原価率、作業時間などを合わせて確認すると、偏りのない判断ができます。
廃棄率は改善判断の入り口であり、単独で評価を完結させないことが大切です。
廃棄率の計算方法のまとめ
廃棄率は、廃棄数量または廃棄原価を、投入数量や仕入原価で割って100を掛けることで計算できます。
数量ベースと金額ベースの両方を確認すれば、量として多いロスと、利益に大きく影響するロスを分けて把握できます。
歩留まり率は良品として活用できた割合、ロス率は廃棄を含む損失全体の割合を示す指標です。
廃棄理由、発生工程、商品カテゴリー、期間をそろえて記録すると、改善すべき場所が見えやすくなります。
発注量の調整、保管方法の改善、先入れ先出しの徹底、製造条件の見直しなどを継続し、利益と品質の両立を意識した在庫管理につなげていきましょう。