エクセルでテストの点数、商品の重量、作業時間などのばらつきを確認したいとき、正規分布グラフはデータの特徴を視覚的に理解するために役立ちます。
実際のデータからヒストグラムを作り、その上に正規分布の曲線を重ねると、平均値の周辺に値が集まっているか、外れ値があるかをひと目で把握できます。
また、RAND関数やNORM.INV関数を利用すれば、正規分布に近い乱数データを作成してグラフの練習をすることも可能です。
正規分布グラフは、平均、標準偏差、度数分布の三つを組み合わせて作成します。
元データを用意し、ヒストグラムで度数を集計してから、正規分布の確率密度を計算した系列を散布図として重ねる流れです。
この記事で扱うサンプルでは、1行目を見出し行として、A列に測定値、B列に階級、C列に度数、D列に正規分布曲線用の値を入力します。
関数の意味を押さえながら進めると、単にグラフを完成させるだけでなく、別のデータへ応用しやすくなります。
それでは、エクセルで正規分布グラフを作成する方法を確認していきましょう。
エクセルで正規分布グラフを作成する手順
それではまず、ヒストグラムと正規分布曲線を重ねたグラフの作成手順について解説していきます。
| 測定値 | 階級の中心 | 度数 | 正規分布の高さ |
|---|---|---|---|
| 48 | 45 | 3 | 2.1 |
| 52 | 55 | 8 | 6.7 |
| 61 | 65 | 12 | 11.4 |
| 73 | 75 | 7 | 7.2 |
最初にA列へ元データを入力し、平均値と標準偏差を求めます。
平均値は任意のセルへAVERAGE関数を入力して算出します。
=AVERAGE(A2:A101)
この式では、A2からA101までに入力した100件の測定値の平均を計算します。
平均は正規分布の山の中心位置を決める数値です。
次に、標準偏差を求めるセルへSTDEV.S関数を入力します。
=STDEV.S(A2:A101)
STDEV.S関数は標本データの標準偏差を求める関数で、データが平均からどの程度広がっているかを示します。
データ全体が母集団そのものだと明確に分かっている場合はSTDEV.P関数を使う選択肢もありますが、通常のアンケート結果や抽出データではSTDEV.S関数が使われます。
平均と標準偏差を計算したら、B列に階級の中心値を並べ、C列に各階級へ入るデータの件数を集計します。
たとえば40から50未満、50から60未満というように階級幅を10で区切る場合、B2には45、B3には55、B4には65と入力します。
度数を集計する方法としては、FREQUENCY関数を利用する方法と、データ分析ツールのヒストグラムを利用する方法があります。
グラフ作成に慣れていない場合は、FREQUENCY関数で表を作る方法が、計算の仕組みを確認しやすいため便利です。
正規分布曲線用の値は、NORM.DIST関数で算出します。
=NORM.DIST(B2,$G$2,$G$3,FALSE)*COUNT($A$2:$A$101)*10
ここでB2は階級の中心値、G2は平均、G3は標準偏差、10は階級幅です。
FALSEを指定すると累積確率ではなく、横軸上の一点における確率密度が返されます。
そのままでは確率密度の値が小さく、度数と縦軸の大きさが合いません。
そこでデータ件数と階級幅を掛けて、ヒストグラムの度数と比較できる高さへ換算します。
正規分布曲線を度数の棒グラフへ重ねるときは、NORM.DISTの結果へ件数と階級幅を掛けることが重要です。
C列とD列の計算結果を使い、集合縦棒グラフを作成した後、D列の系列だけを散布図または折れ線へ変更します。
グラフ上で正規分布の系列を選択し、グラフの種類の変更から散布図の平滑線を選ぶと、なめらかな釣鐘型の線を表示できます。
棒グラフの横軸と曲線の横軸がそろわない場合は、曲線の系列を折れ線グラフへ変更する方法も扱いやすいでしょう。
このとき、棒の間隔を狭くし、曲線の色を見やすい赤や青に指定すると、分布の形を読み取りやすくなります。
【操作のポイント】平均と標準偏差のセルは絶対参照にし、NORM.DIST関数を下方向へコピーしても参照先がずれないようにします。
ヒストグラム用の階級設定
続いては、正規分布グラフの土台となるヒストグラムの階級設定を確認していきます。
| 階級下限 | 階級上限 | 中心値 | 集計対象 |
|---|---|---|---|
| 40 | 50未満 | 45 | 40以上50未満 |
| 50 | 60未満 | 55 | 50以上60未満 |
| 60 | 70未満 | 65 | 60以上70未満 |
| 70 | 80未満 | 75 | 70以上80未満 |
ヒストグラムでは、連続した数値をいくつかの範囲へ分け、各範囲に入る件数を棒として表示します。
この範囲が階級であり、階級の幅がそろっていないと、棒の高さだけでは分布を正しく比較しにくくなります。
たとえばテストの点数なら10点刻み、重量なら0.5グラム刻みというように、データの単位と目的に合わせて設定しましょう。
階級幅を細かくしすぎると棒がばらばらに見え、粗くしすぎると分布の特徴が隠れます。
データ数が少ない場合は、まず5から10程度の階級になるように設定すると、全体像を確認しやすくなります。
階級の中心値は、正規分布曲線の横軸に使います。
下限が40、上限が50の階級であれば、中心値は45です。
階級の中心値の計算式は、下限と上限を足して2で割る形です。
=(下限セル+上限セル)/2
ただし、上限を未満として扱うか以下として扱うかは、集計式の条件で統一する必要があります。
重複を防ぐため、40以上50未満、50以上60未満のように、境界値が二つの階級へ入らない設定にすると安全です。
FREQUENCY関数を使う場合は、ビン範囲として階級の上限値を用意します。
Microsoft 365など動的配列に対応したエクセルでは、出力先の先頭セルへ数式を入力すると結果が自動的に展開されます。
古いバージョンでは、必要な出力範囲を選択してから配列数式として確定する操作が必要になることがあります。
この違いにより結果が表示されない場合があるため、利用中のExcelのバージョンも確認しましょう。
NORM.DIST関数による曲線データ
続いては、NORM.DIST関数で正規分布の曲線データを作る方法を確認していきます。
| 中心値 | 平均 | 標準偏差 | 確率密度 |
|---|---|---|---|
| 45 | 62.4 | 11.8 | 0.011 |
| 55 | 62.4 | 11.8 | 0.028 |
| 65 | 62.4 | 11.8 | 0.033 |
| 75 | 62.4 | 11.8 | 0.019 |
NORM.DIST関数の書式は、NORM.DIST関数の順に、x、平均、標準偏差、累積の指定を入力します。
xには横軸上で調べたい値を指定し、平均にはAVERAGE関数で求めた値、標準偏差にはSTDEV.S関数で求めた値を指定します。
累積の指定をFALSEにすると、曲線の高さを求める確率密度関数として利用できます。
TRUEにすると、指定値以下となる累積確率が返されるため、正規分布表のような用途には使えますが、曲線を描く数値としては適しません。
グラフの山形を作る目的では、NORM.DIST関数の最後の引数をFALSEに設定します。
曲線をより滑らかにしたい場合は、ヒストグラムの階級中心値だけでなく、横軸用の数値を1刻みなど細かく用意します。
たとえば40から90までの値を1ずつ並べ、それぞれにNORM.DIST関数を入力すれば、折れ線グラフで滑らかな曲線を描けます。
一方で、度数分布との比較を優先する場合は、階級幅に合わせた中心値で計算する方法が分かりやすいでしょう。
曲線だけが極端に高い、または低いと感じる場合は、件数と階級幅を掛ける部分を確認します。
データが100件で階級幅が10なら、確率密度へ100と10を掛けます。
階級幅を5へ変えたなら、式の最後も5へ変更する必要があります。
【操作のポイント】NORM.DIST関数の平均と標準偏差には、F4キーで固定した絶対参照を指定するとオートフィルがスムーズです。
複合グラフによる重ね合わせ
続いては、ヒストグラムと正規分布曲線を一つのグラフへ重ねる操作を確認していきます。
| 横軸 | 棒グラフ系列 | 曲線系列 | 表示形式 |
|---|---|---|---|
| 45 | 3 | 2.1 | 棒と線 |
| 55 | 8 | 6.7 | 棒と線 |
| 65 | 12 | 11.4 | 棒と線 |
| 75 | 7 | 7.2 | 棒と線 |
ヒストグラム用の中心値、度数、正規分布の高さを含む表を選択し、挿入タブから集合縦棒グラフを作成します。
最初は度数と正規分布の高さがどちらも棒として表示されます。
正規分布の系列だけを選択し、右クリックして系列グラフの種類の変更を選びます。
組み合わせグラフの設定で、度数を集合縦棒、正規分布を折れ線に変更します。
正規分布の系列を折れ線に変更すると、実測データの棒と理論上の分布を同じ縦軸で比較できます。
棒グラフをヒストグラムらしく見せるには、データ系列の書式設定から要素の間隔を小さくします。
間隔幅を0パーセントから20パーセント程度にすると、隣り合う棒がほぼ接する表示になります。
正規分布曲線は、線の幅を少し太くして目立つ色にし、必要に応じてマーカーを表示します。
横軸の数値が文字列として扱われている場合は、散布図へ変更すると位置が意図どおりにならないことがあります。
このような場合は、中心値の並びを数値として入力し直すか、まず折れ線グラフで作成して確認する方法が安定します。
グラフタイトルには、測定対象と件数が分かる名称を付けると、後から見返したときも内容を判断しやすくなります。
【操作のポイント】棒グラフと曲線の縦軸を同じ尺度にするため、第二軸は基本的に使わず、NORM.DIST関数の結果を度数へ換算します。
ヒストグラム機能による度数分布
続いては、エクセルのヒストグラム機能を使って度数分布を表示する方法を確認していきます。
| データ番号 | 測定値 | データ番号 | 測定値 |
|---|---|---|---|
| 1 | 48 | 6 | 63 |
| 2 | 52 | 7 | 67 |
| 3 | 58 | 8 | 73 |
| 4 | 61 | 9 | 77 |
Excelには、元データだけを選択してヒストグラムを作成できるグラフ機能があります。
A1に測定値という見出しを入力し、A2以下に数値を並べた状態で、データ範囲を選択します。
挿入タブの統計グラフの挿入からヒストグラムを選ぶと、度数分布の棒グラフが自動作成されます。
横軸を右クリックして軸の書式設定を開くと、ビンの幅、ビンの数、アンダーフロービン、オーバーフロービンを調整できます。
ビンの幅は、手作業で作る階級幅に相当する設定です。
たとえばビンの幅を10に設定すれば、10刻みで度数が集計されます。
この方法は素早く分布を確認するのに便利ですが、正規分布曲線を正確に重ねるための計算表は別途必要です。
実務では、最初に標準のヒストグラムでデータの傾向を確認し、その後に関数を使った表で比較用の複合グラフを作る流れが使いやすいでしょう。
ヒストグラムの棒が左右対称に近く、中央付近が最も高い形なら、正規分布に近い可能性があります。
ただし、グラフの見た目だけで正規分布と断定することはできません。
データの数、外れ値、測定条件、分布の歪みも合わせて確認する必要があります。
【操作のポイント】自動ヒストグラムで適切なビン幅を探してから、同じ幅を使って正規分布曲線用の表を作ると整合性を取りやすくなります。
統計グラフの挿入操作
続いては、統計グラフからヒストグラムを挿入する具体的な操作を確認していきます。
| A列 | B列 | C列 |
|---|---|---|
| 測定値 | ||
| 48 | ||
| 52 | ||
| 61 |
A1からA101までの範囲を選択する際は、見出しも含めるかどうかでグラフの表示が変わる場合があります。
一般的には見出しを含めて選択し、グラフのタイトルや凡例で何のデータかを確認できる状態にすると分かりやすいでしょう。
挿入タブには、縦棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなどが並んでいます。
ヒストグラムは統計グラフの挿入に含まれるため、通常の縦棒グラフと選択場所が異なる点に注意が必要です。
作成直後のグラフは、エクセルが自動判定した区切り幅で表示されます。
元データの範囲が広いと、棒が細かくなりすぎたり、反対に区切りが大まかになりすぎたりすることがあります。
横軸の数値を右クリックして軸の書式設定を開き、ビンの設定を変更しましょう。
表示を見ながら、データの山や偏りを読み取れる幅へ調整します。
ヒストグラムは棒の本数を増やすことが目的ではなく、データの分布を理解できる区切りにすることが目的です。
データ分析ツールによる集計
続いては、分析ツールを利用してヒストグラムの集計表を出力する方法を確認していきます。
| 入力範囲 | ビン範囲 | 出力範囲 | 用途 |
|---|---|---|---|
| A2:A101 | C2:C7 | E1 | 度数表作成 |
分析ツールは、データタブにあるデータ分析から利用できるアドイン機能です。
データ分析が表示されない場合は、ファイルタブのオプションからアドインを開き、分析ツールを有効にします。
データ分析の一覧でヒストグラムを選択すると、入力範囲とビン範囲を指定する画面が表示されます。
入力範囲には測定値のセル範囲を、ビン範囲には階級の上限値を並べたセル範囲を指定します。
出力先を指定すると、ビンごとの度数と累積度数が表として作成されます。
この表は正規分布曲線を作成する際の元表として活用しやすい形式です。
ただし、ビンの扱いは上限値以下を基準に集計されるため、階級の意味を確認しておく必要があります。
集計結果の最後にその他として表示される行は、最大のビンを超えた値の件数です。
範囲外の値が出ないように、最後のビンを十分大きく設定するか、その他の行を別途確認しましょう。
分析ツールで出力した度数表を使う場合も、正規分布曲線は階級中心値を横軸としてNORM.DIST関数で別列に計算します。
ビン幅と外れ値の確認
続いては、ビン幅と外れ値がグラフの見え方へ与える影響を確認していきます。
| 設定例 | ビン幅 | 見え方 | 確認事項 |
|---|---|---|---|
| 細かい設定 | 2 | 棒が多い | 偶然のばらつき |
| 標準的な設定 | 5 | 山が見やすい | 中心と広がり |
| 粗い設定 | 10 | 全体像が見やすい | 細部の差 |
同じ元データでも、ビン幅を変えるとヒストグラムの形は大きく変わります。
ビン幅が小さいと細かな凹凸まで表れますが、データ数が少ない場合は偶然の変動を強調することがあります。
ビン幅が大きいと全体の傾向は読み取りやすくなりますが、二つの山がある分布などを見落とす可能性があります。
一つのビン幅だけで判断せず、複数の幅で確認すると分布の本来の特徴をつかみやすくなります。
外れ値は、平均や標準偏差を大きく動かす原因になります。
たとえば通常は50から80に収まる測定値の中に、150という値が一件だけ含まれると、正規分布曲線が広がりすぎることがあります。
外れ値を削除する前には、入力ミス、単位違い、測定条件の違いではないかを確認しましょう。
正しい値であれば、都合よく除外せず、なぜ外れたかを検討することが大切です。
乱数を使った正規分布データ
続いては、RAND関数とNORM.INV関数を使い、練習用の正規分布データを作成する方法を確認していきます。
| 行 | 乱数 | 正規分布乱数 | 表示例 |
|---|---|---|---|
| 2 | 0.4218 | 58.7 | 59 |
| 3 | 0.7824 | 71.3 | 71 |
| 4 | 0.1362 | 49.9 | 50 |
| 5 | 0.5547 | 63.6 | 64 |
正規分布の形を試したいのに元データがない場合は、乱数を使ってサンプルを作成できます。
RAND関数は0以上1未満の一様乱数を返す関数です。
一様乱数とは、特定の数値が偏って出るのではなく、範囲内でおおむね同じ確率で出現する乱数です。
このRAND関数の結果をNORM.INV関数へ渡すと、指定した平均と標準偏差に従う正規分布乱数へ変換できます。
=NORM.INV(RAND(),60,10)
この式は、平均60、標準偏差10の正規分布に従う値を返します。
NORM.INV関数は確率を入力し、その確率に対応する正規分布上の値を返す関数です。
RAND関数が毎回異なる確率を発生させるため、計算結果も再計算のたびに変化します。
整数のデータにしたい場合は、ROUND関数で四捨五入します。
=ROUND(NORM.INV(RAND(),60,10),0)
この数式をA2に入力し、A101までオートフィルすれば、100件の練習用データを作成できます。
作成したデータは、通常の測定値と同じように平均、標準偏差、ヒストグラム、正規分布曲線の作成へ利用できます。
ただし、RAND関数を含むセルはワークシートを編集するたびに再計算されることがあります。
作成したサンプルを固定したい場合は、対象セルをコピーし、形式を選択して貼り付けから値を選択して貼り付けます。
【操作のポイント】乱数を固定する前に、ヒストグラムの形と平均値を確認し、目的に合うサンプルになっているかを確認します。
RAND関数とNORM.INV関数
続いては、RAND関数とNORM.INV関数の役割を分けて確認していきます。
| 関数 | 主な役割 | 返される値 | 利用場面 |
|---|---|---|---|
| RAND | 一様乱数の生成 | 0以上1未満 | 確率の作成 |
| NORM.INV | 正規分布への変換 | 指定範囲の数値 | 模擬データ |
| ROUND | 桁数の調整 | 丸めた数値 | 整数化 |
RAND関数だけでは、0から1未満の小数しか得られません。
そこでNORM.INV関数を組み合わせ、平均と標準偏差を持つ値へ変換します。
NORM.INV関数の一つ目の引数は確率であり、0より大きく1より小さい値を指定します。
RAND関数はこの条件を満たす値を返すため、二つの関数は組み合わせやすい関係です。
二つ目の引数には目標とする平均値を、三つ目の引数には標準偏差を入力します。
平均70、標準偏差8のテスト得点を模したいなら、NORM.INV関数の平均へ70、標準偏差へ8を指定します。
標準偏差を大きくすると値の広がりが増え、小さくすると平均付近へ集中します。
実際の試験結果には満点や最低点がありますが、正規分布乱数は理論上、非常に低い値や高い値を返す可能性があります。
点数を0から100に制限したい場合は、MIN関数とMAX関数を組み合わせて上下限を設ける方法があります。
=MAX(0,MIN(100,ROUND(NORM.INV(RAND(),70,8),0)))
この式では、結果が0未満なら0、100を超えたなら100に調整します。
オートフィルによるサンプル作成
続いては、数式をオートフィルでコピーして多数の乱数データを作る方法を確認していきます。
| A列 | B列 | C列 |
|---|---|---|
| 番号 | 正規分布乱数 | 固定値 |
| 1 | =ROUND(NORM.INV(RAND(),60,10),0) | |
| 2 | 数式をコピー | |
| 3 | 数式をコピー |
B2へ数式を入力したら、セル右下に表示される小さな四角形であるフィルハンドルを使います。
フィルハンドルを下方向へドラッグすると、同じ構造の数式が各行へコピーされます。
隣のA列に連続した番号が入力されている場合は、フィルハンドルをダブルクリックすると、番号が入力された最終行まで自動コピーできることがあります。
乱数の数式は各行で独立して計算されるため、オートフィル後には異なる値が並びます。
100件程度のデータであれば、ヒストグラムに釣鐘型の傾向が現れ始めます。
ただし乱数には偶然の偏りがあるため、100件では左右非対称になることもあります。
件数を500件、1000件と増やすほど、理論的な正規分布の形へ近づきやすくなります。
練習用のデータでは、件数を変えたときのヒストグラムの違いも確認すると理解が深まります。
値貼り付けによる乱数固定
続いては、再計算で変わる乱数を値として固定する方法を確認していきます。
| 操作前 | コピー操作 | 貼り付け後 |
|---|---|---|
| 数式入りの乱数 | コピー | 値のみの乱数 |
| 再計算で変化 | 形式を選択して貼り付け | 変化しない |
RAND関数は揮発性関数であり、ブックの再計算時に結果が更新されます。
数式を入力した直後は理想的な分布だったのに、別のセルを編集した後で形が変わることもあります。
分析結果を保存したい場合は、乱数が入ったセル範囲を選択してコピーします。
同じ場所または別の列で右クリックし、形式を選択して貼り付けから値を選択します。
すると数式は消え、表示されていた数値だけが残ります。
値貼り付け後のデータは再計算されないため、作成時点のヒストグラムとグラフを再現できます。
元の数式を残しておきたい場合は、B列を数式用、C列を固定値用として分けると安全です。
分析にはC列の固定値を使い、別の条件で再びサンプルを作りたいときはB列の数式を利用します。
平均と標準偏差の計算
続いては、正規分布グラフの中心と広がりを決める平均と標準偏差について確認していきます。
| 項目 | 数式例 | 結果例 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 平均 | =AVERAGE(A2:A101) | 62.4 | 中心位置 |
| 標準偏差 | =STDEV.S(A2:A101) | 11.8 | ばらつき |
| 件数 | =COUNT(A2:A101) | 100 | データ数 |
平均値はデータの中心を表す代表値であり、正規分布曲線の最も高い位置に関係します。
標準偏差は、個々の値が平均からどれくらい離れているかを表す指標です。
標準偏差が小さいデータでは曲線が細く高くなり、大きいデータでは曲線が広く低くなります。
平均が同じでも標準偏差が違えば、正規分布グラフの形はまったく異なります。
平均が60で標準偏差が5なら、多くの値は60の近くに集まります。
平均が60で標準偏差が15なら、値はより広い範囲へ散らばります。
正規分布では、平均から標準偏差一つ分の範囲に、全体のおよそ68パーセントが含まれると考えられます。
平均から標準偏差二つ分の範囲では、およそ95パーセントが含まれます。
この考え方を使うと、通常の範囲から大きく外れた値を確認する目安にもなります。
【操作のポイント】平均、標準偏差、件数はグラフの近くに計算用セルとしてまとめ、数式で参照しやすい位置に配置します。
AVERAGE関数による平均値
続いては、AVERAGE関数で平均値を計算する方法を確認していきます。
| A列の測定値 | 合計 | 件数 | 平均 |
|---|---|---|---|
| 48 | 6240 | 100 | 62.4 |
AVERAGE関数は、指定したセル範囲にある数値の平均を求めます。
文字列や空白セルは通常は平均の計算対象から除かれます。
しかし、0は数値として扱われるため、未入力の意味で0を入力していると平均が低くなることがあります。
集計前には、0が実測値なのか、欠損値の代わりなのかを確認しましょう。
条件に合うデータだけの平均を出す場合はAVERAGEIF関数やAVERAGEIFS関数を使えます。
たとえば部署別、製品別、月別の正規分布を比較したい場合に便利です。
ただし、抽出条件ごとに標準偏差も計算し直さなければ、正しい正規分布曲線にはなりません。
STDEV.S関数とSTDEV.P関数
続いては、STDEV.S関数とSTDEV.P関数の使い分けを確認していきます。
| 関数 | 対象 | 主な利用例 | 特徴 |
|---|---|---|---|
| STDEV.S | 標本 | 一部の検査結果 | 標本補正あり |
| STDEV.P | 母集団 | 全社員の結果 | 全数データ向け |
STDEV.S関数は、より大きな集団から抽出した標本を分析する場合に用いる標準偏差です。
STDEV.P関数は、対象となる全データを母集団として扱う場合に用います。
両者の値は大きく違わないこともありますが、データ数が少ないと差が目立つ場合があります。
どちらの関数を使うかは、数式の好みではなく、手元のデータが全数か抽出かで判断します。
正規分布曲線の比較では、同じ基準を一貫して使うことが大切です。
途中でSTDEV.S関数とSTDEV.P関数を混在させると、計算結果の説明が難しくなります。
標準偏差を用いた範囲判定
続いては、平均と標準偏差を使ってデータ範囲を確認する考え方を見ていきます。
| 範囲 | 計算例 | 平均62.4 標準偏差11.8の場合 |
|---|---|---|
| 平均±1標準偏差 | 平均±標準偏差 | 50.6から74.2 |
| 平均±2標準偏差 | 平均±2×標準偏差 | 38.8から86.0 |
平均から標準偏差一つ分を引いた値と足した値を計算すると、中心的な範囲を把握できます。
=平均セル-標準偏差セル
=平均セル+標準偏差セル
正規分布に近いデータでは、この範囲におよそ68パーセントが入ることが期待されます。
平均から標準偏差二つ分以上離れた値が多い場合は、分布が正規分布と異なる、外れ値がある、複数の集団が混ざっているといった可能性を考えます。
ただし、これはあくまで分析の入り口です。
業務上の異常判定では、品質基準や管理規格、測定誤差なども踏まえて判断しましょう。
グラフの書式と見やすさ
続いては、完成した正規分布グラフを読みやすく整える方法を確認していきます。
| 調整項目 | 対象 | おすすめの考え方 |
|---|---|---|
| 棒の間隔 | ヒストグラム | 狭くして連続性を出す |
| 線の色 | 正規分布曲線 | 棒と対照的な色 |
| グラフタイトル | 全体 | 対象と期間を明記 |
| 軸ラベル | 横軸と縦軸 | 単位を付ける |
正規分布グラフでは、棒が実測データ、線が理論上の分布であることを読者がすぐ理解できる表示が重要です。
度数の棒には淡い色を使い、正規分布曲線には濃い色を使うと重なっても判別しやすくなります。
凡例には度数、正規分布など、内容が分かる系列名を設定しましょう。
グラフの見た目を整える作業は装飾ではなく、分析結果を誤解なく伝えるための工程です。
横軸には点数、重量、時間などの測定単位を含め、縦軸には度数または件数と表示すると意味が明確になります。
グラフタイトルには、対象期間やデータ件数を含めると、資料として単独で共有されても内容を判断できます。
【操作のポイント】曲線が棒の後ろに隠れる場合は、グラフの種類の変更や系列順序を調整し、線が前面に表示される状態にします。
棒グラフの間隔幅
続いては、ヒストグラムの棒を連続した分布として見せる間隔幅の調整を確認していきます。
| 間隔幅 | 表示の印象 | 適した用途 |
|---|---|---|
| 0パーセント | 棒が接する | ヒストグラム |
| 50パーセント | 少し間が空く | 比較しやすい表示 |
| 150パーセント | 棒が離れる | 通常のカテゴリ比較 |
集合縦棒グラフで作成したヒストグラムは、初期設定では棒と棒の間に隙間があります。
データ系列を右クリックしてデータ系列の書式設定を開き、要素の間隔を調整します。
ヒストグラムとして見せる場合は、0パーセントへ近づけると階級が連続していることを伝えやすくなります。
棒が完全に重なって見える場合は、塗りつぶしの透明度や枠線も調整しましょう。
正規分布曲線を重ねる場合は、棒の塗りつぶしを少し淡くすると線が見えやすくなります。
正規分布曲線の系列設定
続いては、正規分布曲線を見やすい線として表示する系列設定を確認していきます。
| 設定項目 | 推奨例 | 目的 |
|---|---|---|
| グラフ種類 | 折れ線または散布図 | 曲線表示 |
| 線の太さ | 2ポイント前後 | 視認性 |
| 線の色 | 赤または青 | 棒との区別 |
| マーカー | 必要に応じて非表示 | 線を滑らかに見せる |
正規分布の値を折れ線として表示すると、各階級中心値を結んだ線になります。
横軸用の数値を細かく用意した場合は、散布図の平滑線を使うことで、より自然な釣鐘型を表現できます。
一方で、散布図と棒グラフの組み合わせは軸の種類が異なるため、設定が複雑になることがあります。
まずは折れ線グラフで作成し、必要に応じて散布図へ進む方法がおすすめです。
曲線の形よりも横軸と縦軸の対応が正しいことを優先して確認しましょう。
曲線に不要なマーカーが付いていると、データ点が少ない場合に角張って見えることがあります。
データ系列の書式設定からマーカーをなしにすると、線の見た目をすっきりさせられます。
Excel操作画面のイメージ
続いては、複合グラフを作成するときのExcel操作画面のイメージを確認していきます。
▣
B I U
≡ ↔
▥ ➤ 折れ線
| A | B | C | D | E | |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | 測定値 | 中心値 | 度数 | 正規分布 | |
| 2 | 48 | 45 | 3 | 2.1 | |
| 3 | 52 | 55 | 8 | 6.7 | |
| 4 | 61 | 65 | 12 | 11.4 |
グラフの種類の変更では、度数系列を集合縦棒、正規分布系列を折れ線に設定します。
画面上では正規分布の列とグラフの種類の変更操作を確認し、対象の系列を間違えないようにしましょう。
正規分布グラフで起こりやすい問題
続いては、正規分布グラフの作成時に起こりやすい問題と確認方法を見ていきます。
| 症状 | 主な原因 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 曲線が低すぎる | 度数換算なし | 件数と階級幅 |
| 山がずれる | 平均参照の誤り | 絶対参照 |
| 棒と線が合わない | 横軸の設定差 | 中心値とビン |
| 値が変化する | RAND関数 | 値貼り付け |
グラフが期待どおりに表示されない場合は、見た目だけを修正する前に計算表を確認します。
特にNORM.DIST関数の最後の引数、平均と標準偏差のセル参照、階級幅は重要な確認項目です。
グラフの問題の多くは、元データ、階級、数式の対応関係を確認すると解決できます。
ヒストグラムと曲線が完全に一致しないこと自体は異常ではありません。
棒は実測データの度数であり、曲線は平均と標準偏差から計算した理論値だからです。
大きく異なる場合には、データが正規分布に従っていない、階級幅が適切ではない、複数のグループが混在している可能性を検討しましょう。
【操作のポイント】数式の各要素を別セルで計算して確認すると、どの部分で値が変わったかを特定しやすくなります。
曲線の高さが合わない原因
続いては、正規分布曲線の高さがヒストグラムと合わない原因を確認していきます。
| 確認項目 | 誤った例 | 正しい考え方 |
|---|---|---|
| NORM.DIST | 確率密度のまま | 件数と階級幅を掛ける |
| 累積指定 | TRUE | FALSE |
| 階級幅 | 式と表で不一致 | 同じ幅を使う |
NORM.DIST関数が返す確率密度は、通常は0点数程度の小さな値です。
ヒストグラムの度数は数件から数十件になるため、そのまま重ねると曲線は横軸付近に張り付いて見えます。
この問題を防ぐには、確率密度へデータ件数と階級幅を掛けます。
また、最後の引数をTRUEにした場合は累積確率が返され、右肩上がりの線になってしまいます。
釣鐘型の曲線にならないときは、FALSEの指定を最初に確認しましょう。
階級幅を10から5へ変更したのに数式の最後が10のままなら、曲線の高さも合わなくなります。
階級設定を変更した際は、度数表と正規分布の数式をセットで見直します。
横軸がずれる原因
続いては、棒グラフと正規分布曲線の横軸がずれる原因を確認していきます。
| 要素 | ヒストグラム | 曲線 | そろえる内容 |
|---|---|---|---|
| 横軸 | 階級 | 中心値 | 階級の中央 |
| 幅 | ビン幅 | 計算の階級幅 | 同じ数値 |
ヒストグラムの棒は、ある範囲の度数を表します。
一方で正規分布曲線は、特定の横軸値における高さを表します。
両者を比較するには、曲線のx値として各階級の中心値を使うのが基本です。
下限や上限をそのまま使うと、曲線が棒の中心から半階級分ずれて見えることがあります。
棒グラフをカテゴリ軸で作り、曲線を数値軸の散布図で作る場合も、ずれが起こりやすいポイントです。
まずは同じ中心値の表を使った複合グラフで確認し、必要があれば散布図へ発展させましょう。
乱数データが変わる原因
続いては、作成した乱数データやグラフが変化する原因を確認していきます。
| 操作 | RAND関数の結果 | 対処 |
|---|---|---|
| セルを編集 | 変化する場合がある | 値貼り付け |
| ブックを開き直す | 変化する場合がある | 固定値を保存 |
| F9キーで再計算 | 変化する | 意図して再生成 |
RAND関数は、乱数を何度も発生させるための関数です。
そのため、再計算のたびに値が変わる挙動はエラーではありません。
複数のパターンを試す段階では便利ですが、レポートや資料へ使う段階では値を固定する必要があります。
値貼り付けを行う前に、数式が残った元のシートを複製しておくと、後から別の乱数データを作ることもできます。
データの再現性を重視する場合は、固定後のファイル名やシート名に作成日や条件を記録しておくと管理しやすいでしょう。
まとめ エクセルで正規分布グラフを作成する方法
エクセルで正規分布グラフを作成するには、元データから平均と標準偏差を求め、階級ごとの度数をヒストグラムとして表示します。
そのうえで、NORM.DIST関数を使って各階級中心値の確率密度を計算し、データ件数と階級幅を掛けて度数に合わせた値へ換算します。
度数の棒グラフと正規分布の折れ線を重ねることで、実測データのばらつきと理論的な分布を比較できます。
ヒストグラム機能は分布を素早く確認する際に便利であり、分析ツールを使えば度数表も作成できます。
練習用のデータが必要な場合は、RAND関数とNORM.INV関数を組み合わせることで、任意の平均と標準偏差を持つ正規分布乱数を作成できます。
乱数を資料へ使うときは、値貼り付けで固定することも忘れないようにしましょう。
曲線の高さが合わない場合は、NORM.DIST関数がFALSEになっているか、件数と階級幅を掛けているかを確認します。
横軸がずれる場合は、ヒストグラムの階級と曲線用の中心値が対応しているかを見直します。
平均、標準偏差、階級幅の意味を理解しておけば、品質管理、売上分析、試験結果、作業時間の分析など、さまざまなデータへ応用できるでしょう。