水酸化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陽極と陰極で異なる反応が起こります。
電極で発生する気体や反応式を正しく理解するには、水酸化ナトリウムそのものだけでなく、水と水酸化物イオンの働きに目を向けることが大切です。
この記事では、陰極と陽極の反応、全体の化学反応式、イオン化傾向との関係、実験での注意点まで順番に整理します。
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解の結論

それではまず水酸化ナトリウム水溶液の電気分解の結論について解説していきます。
陰極で発生する水素
水酸化ナトリウム水溶液を電気分解した場合、陰極では水素が発生します。
陰極は電源装置のマイナス極につながる電極であり、電子を受け取る還元反応が進む場所です。
水溶液中にはナトリウムイオン、水酸化物イオン、水分子が存在していますが、ナトリウムイオンは電子を受け取って金属ナトリウムになりにくい性質を持ちます。
そのため、実際には水分子が電子を受け取り、水素と水酸化物イオンを生じます。
陰極での反応式
2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻
試験管などで集めた気体に火を近づけると、小さな音を立てて燃えることがあります。
これは水素の性質を利用した確認方法です。
陽極で発生する酸素
陽極では、水酸化物イオンが電子を失って酸素を発生させます。
陽極は電源装置のプラス極側であり、酸化反応が進む電極です。
水酸化物イオンから電子が取り去られることで、水、酸素、電子が生じます。
陽極での反応式
4OH⁻ → O₂ + 2H₂O + 4e⁻
発生した酸素は、火の消えかかった線香を近づけると再び勢いよく燃え出す性質で確認できます。
ただし、気体の量が少ない場合や空気が混ざった場合には、観察しにくいこともあります。
全体で見た反応の内容
陰極と陽極の半反応式を電子の数がそろうようにまとめると、全体としては水が水素と酸素に分解された形になります。
水酸化ナトリウムは反応で使い切られるのではなく、電流を流しやすくする役割を担います。
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解では、陰極から水素、陽極から酸素が発生します。
気体の体積比は、理想的には水素が2、酸素が1です。
全体の反応式
2H₂O → 2H₂ + O₂
見かけ上は水酸化ナトリウム水溶液を使っていますが、中心となる変化は水の電気分解です。
この違いを押さえると、化学反応式の判断が安定します。
陽極と陰極の反応の仕組み
続いては陽極と陰極の反応の仕組みを確認していきます。
電子の移動と還元反応
陰極では外部電源から電子が供給されます。
電子を受け取る変化を還元といい、水酸化ナトリウム水溶液では水分子が還元されます。
ナトリウムイオンをNa⁺と表し、水分子をH₂Oと表すと、どちらが電子を受け取るかを考える必要があります。
ナトリウムは非常に反応性の高い金属であり、水溶液中で金属として析出するより、水が先に還元されて水素になると考えます。
このため、陰極付近では水酸化物イオンが増え、アルカリ性が保たれます。
電子の放出と酸化反応
陽極では電子が外部回路へ引き抜かれます。
電子を失う変化が酸化であり、水酸化物イオンが酸化される点が重要です。
水酸化物イオン4個から電子4個が生じる反応を考えると、酸素分子1個と水分子2個ができます。
酸素は二原子分子のため、反応式ではOではなくO₂と書く必要があります。
電子の数と原子の数の両方をそろえることが、半反応式を作る基本です。
気体の体積比
水素と酸素の発生量には明確な関係があります。
全体の反応式で水2分子から水素2分子と酸素1分子ができるため、同じ温度と圧力で比べれば気体の体積比は水素対酸素で2対1になります。
| 電極 | 電源との接続 | 反応の種類 | 主な発生物 |
|---|---|---|---|
| 陰極 | マイナス極 | 還元 | 水素 |
| 陽極 | プラス極 | 酸化 | 酸素 |
実験では装置内の空気や気体の溶けやすさの影響を受けるため、最初から正確な2対1にならないこともあります。
それでも、十分に電気分解を続けると比の関係を確かめやすくなるでしょう。
イオン化傾向と析出物の関係
続いてはイオン化傾向と析出物の関係を確認していきます。
ナトリウムが析出しない理由
水酸化ナトリウムは水中でナトリウムイオンと水酸化物イオンに電離しています。
それにもかかわらず、陰極に金属ナトリウムが付着しない理由は、ナトリウムのイオン化傾向にあります。
ナトリウムは水素よりもイオン化傾向が大きく、水溶液から電子を受け取って金属になることは難しい元素です。
仮に金属ナトリウムがわずかに生じても、水とすぐに反応して水酸化ナトリウムと水素を生じます。
水溶液の電気分解では、金属イオンが存在するだけで金属が析出するとは限りません。
イオン化傾向と水の還元されやすさを比較する必要があります。
水素より下の金属イオン
銅イオンや銀イオンのように、イオン化傾向が水素より小さい金属イオンを含む水溶液では、陰極に金属が析出しやすくなります。
たとえば硫酸銅水溶液では、陰極に赤色の銅が付着します。
一方、水酸化ナトリウム水溶液のナトリウムイオンはその条件に当てはまりません。
電気分解の生成物は、溶けているイオンの名前だけで決めないことが大切です。
水の存在、電極の種類、電解質の濃度も判断材料になります。
融解した水酸化ナトリウムとの違い
水を含まない融解状態の水酸化ナトリウムでは、水分子が存在しません。
その場合、陰極ではナトリウムイオンが電子を受け取り、金属ナトリウムが生じる可能性があります。
水溶液と融解物では、電気分解の結果が異なる点に注意が必要です。
| 対象 | 陰極で主に起こる変化 | 陽極で主に起こる変化 |
|---|---|---|
| 水酸化ナトリウム水溶液 | 水から水素の発生 | 水酸化物イオンから酸素の発生 |
| 融解した水酸化ナトリウム | ナトリウムイオンから金属ナトリウムの生成 | 水酸化物イオンの酸化 |
問題文に水溶液とあるか、融解状態とあるかで答えが変わります。
この条件確認は、入試問題や定期試験でも重要な着眼点です。
半反応式と全体反応式の作り方
続いては半反応式と全体反応式の作り方を確認していきます。
陰極の式の立て方
陰極では水が水素に変わることから書き始めます。
まず水素原子の数を合わせ、水分子2個から水素分子1個を作ります。
次に酸素原子を合わせるため、水酸化物イオンを右辺に置きます。
最後に電荷をそろえるため、左辺に電子2個を加えます。
こうして、2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻という式になります。
原子数だけでなく、式全体の電荷も必ず確認してください。
陽極の式の立て方
陽極では水酸化物イオンから酸素が生じます。
酸素分子には酸素原子が2個あるため、水酸化物イオンを4個用いると計算しやすくなります。
右辺に酸素分子1個と水分子2個を置くと、水素原子と酸素原子の数がそろいます。
左辺の電荷はマイナス4なので、右辺に電子4個を加えれば電荷も一致します。
電子が右辺にあることは、陽極で電子が放出される酸化反応であることも示しています。
電子数を消去する手順
半反応式を足し合わせる際には、電子を打ち消せるように数をそろえます。
陰極の式は電子2個、陽極の式は電子4個なので、陰極の式を2倍にします。
陰極の式を2倍した式
4H₂O + 4e⁻ → 2H₂ + 4OH⁻
陽極の式
4OH⁻ → O₂ + 2H₂O + 4e⁻
両式を加えると、電子と水酸化物イオンが左右で消去されます。
さらに水分子を整理すると、2H₂O → 2H₂ + O₂となります。
全体反応式にNaOHが残らない理由も、この計算から確認できます。
実験装置と観察時の注意点
続いては実験装置と観察時の注意点を確認していきます。
電極のつなぎ方
電源装置のマイナス側につないだ電極が陰極で、プラス側につないだ電極が陽極です。
電池の正極と負極のイメージだけで覚えると混乱しやすいため、電気分解では外部電源との接続で判断するとよいでしょう。
陰極では電子が流れ込み、陽極では電子が流れ出します。
観察用の試験管を電極の上にかぶせる場合は、内部の空気が最初に残ることも考慮します。
水酸化ナトリウムの役割
純粋な水は電気を通しにくいため、そのままでは電気分解が進みにくい傾向があります。
水酸化ナトリウムを溶かすと、ナトリウムイオンと水酸化物イオンが電流を運び、電気分解を行いやすくなります。
このように水に溶けて電気を通す物質を電解質といいます。
水酸化ナトリウムは電流を流すための電解質として働くという説明が、基本問題では求められます。
水酸化ナトリウム水溶液では、水酸化ナトリウムが電気分解の主生成物になるわけではありません。
水を分解しやすくする環境を整える物質として理解しましょう。
安全面と気体の確認
水酸化ナトリウム水溶液は強いアルカリ性を示し、皮膚や目に付くと危険です。
保護眼鏡を着用し、薬品が付着した場合は大量の水で速やかに洗い流します。
発生する水素には引火性があり、気体の確認で火を使う場合は量を少なくし、周囲の安全を十分に確保する必要があります。
酸素の確認には、火の消えかかった線香を使います。
水素と酸素を混同しないよう、どちらの電極から集めた気体なのかを記録しておくと安心です。
水酸化ナトリウム水溶液の電気分解のまとめ
水酸化ナトリウム水溶液を電気分解すると、陰極では水が還元されて水素が発生します。
陽極では水酸化物イオンが酸化され、酸素が発生します。
陰極は水素、陽極は酸素という組み合わせを、電子の移動と合わせて覚えると理解が深まるでしょう。
半反応式は陰極で2H₂O + 2e⁻ → H₂ + 2OH⁻、陽極で4OH⁻ → O₂ + 2H₂O + 4e⁻です。
これらを加えた全体反応式は2H₂O → 2H₂ + O₂となります。
ナトリウムイオンが金属として析出しないのは、ナトリウムのイオン化傾向が大きく、水が先に還元されるためです。
水溶液か融解物か、陰極か陽極か、還元か酸化かを一つずつ確認すれば、電気分解の反応式は落ち着いて判断できます。